世界では少なくとも2億6千万人のクリスチャンが信仰を理由に迫害されている――。
世界の迫害下にあるクリスチャンのために祈ろうと、世界福音同盟(WEA)信教の自由委員会が、「迫害下にある教会のための国際祈祷日」(IDOP)への参加を呼び掛けている。IDOPは毎年11月第1、第2日曜日で、今年は11月1日と8日。今年は「彼らと一つに(One With Them)」をテーマに掲げている。
WEAやIDOPによると、2019年に信仰を理由に殺害されたクリスチャンは世界で2983人。毎日8人が殺されている計算になる。さらに毎日10人のクリスチャンが勾留または収監され、教会またはキリスト教関係の建物25軒が毎日襲撃されている。
WEAの副総主事で信教の自由委員会委員長のゴッドフリー・ヨガラジャ氏は、呼び掛け文(英語)で、北朝鮮やインド、パキスタン、ナイジェリアなど特に迫害の激しい国々を挙げながら、次のように呼び掛けている。
「聖書はヘブライ人への手紙13章3節で、自分たちが苦しんでいるのと同じように、苦しむ人々のために祈るよう、クリスチャンに命じています。言い換えれば、聖書は私たちに、苦しんでいる人を思い出すだけでなく、彼らの苦しみの中で『彼らと一つに』なるよう呼び掛けています。この御言葉に従いつつ、IDOPは世界中の苦しむキリストの体(教会)のために祈るよう、何百万人ものクリスチャンに結束をもたらしてきました。結局のところ、聖書が言うように、一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しむのです」
ヨガラジャ氏は、IDOPがこれまでに、迫害に苦しむクリスチャンの状況を分かち合うプラットフォームとしての役割を担ってきたと強調。また、実際に迫害下にあるクリスチャンに対しては、自分たちが大きな世界的な信仰共同体の一員であることを示す、連帯と励ましの源泉となってきたと語った。
IDOPは今年の祈りのスライド(英語)で、具体的に北朝鮮、アフガニスタン、ブルキナファソ、ネパール、コロンビアの5カ国を挙げ、各国の状況を共有するとともに祈りの課題を分かち合っている。
それによると、北朝鮮には推計で20~40万人のクリスチャンがいるとされているが、そのうち5~7万人は強制労働収容所に収監されている。 収容者は拷問され、飢えに苦しみながら、危険な環境下での長時間労働を強いられている。時には人体実験や処刑の対象となることもある。
イスラム教からの改宗が違法とされているアフガニスタンでは、中央政府、地方政府共にクリスチャンに対して敵対的な対応を取っている。キリスト教に興味を示すだけでも、家族や雇用主、地域社会が、時には拷問を伴う方法でイスラム教に引き戻そうとし、さらにタリバンや「イスラム国」(IS)などイスラム過激派による脅威も加わる。
西アフリカのブルキナファソでは昨年、イスラム過激派組織の活動がサヘル地域で活発化したことにより、少なくとも40人のクリスチャンが殺害された。ヒンズー教徒が多数派のネパールではこの数年、宗教的なナショナリズムが台頭し、クリスチャンに対する迫害を後押ししている。2017年には改宗を禁止する法律が成立し、ヒンズー過激派による迫害がますます強まっているという。
コロンビアはキリスト教が多数派を占める国だが、人権活動や平和活動を指導するキリスト教指導者を中心に嫌がらせや脅迫が相次ぎ、時にはゲリラ組織や犯罪グループによって殺害されるケースもある。こうした暴力は、違法な武装グループが活動を制限されることを恐れているためで、迫害の多くは武装グループの保護を受けている地域の当局者によって行われているという。
IDOPのサイトではこのほか、迫害に関する神学的な考察や迫害に関する聖句、IDOPのロゴなどの資料(いずれも英語)をまとめて公開している。