東南アジアやアフリカの一部の国では、キリスト教徒が、自身の信仰を貫くか、新型コロナウイルスの公的支援を受けるかで選択を迫られている。
「元の宗教に再改宗しない限り、地域社会の食料支援が受けられないという報告がキリスト教徒たちから殺到しています」。キリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」のアジア地域広報担当者であるジャン・フェルメール氏はそう話す。
そのため、一部のキリスト教徒は「自国で支配的な宗教に後戻りする」選択をしている。一方、迫害が激化する中で「自殺を考える」人も出ているという。
オープン・ドアーズの東南アジア担当者であるサム牧師(安全上の理由で仮名)は、バングラデシュの農村部の様子について次のように語る。
「現地政府が多くの人を支援していますが、多くのキリスト教徒、特にイスラム教や仏教から改宗した人たちは、食物支援が村に届いてもそれを受け取れません。村長は普通、キリスト教徒を差別しています。村長たちは言います。『あなたはキリスト教徒ですね。キリスト教徒になったのだから、この支援の対象ではありません』」
「生き伸びる手段がない人は、命を捨てるかイスラム教に改宗するしかありません」とサム牧師は嘆く。オープン・ドアーズの支援がなければ、一部の地域では「多くのキリスト教徒が栄養失調や飢餓で確実に命を落とします。あるいは、イエス様に従うのは難しいと考えるでしょう」とサム牧師は続ける。「最近入信した人の多くは信仰が強いわけではありませんから、主にあって強められる必要があります」
スーダンでは、キリスト教に改宗した信者は、信仰を諦めてイスラム教に再改宗しない場合、ホームレスか飢餓状態に陥ってしまうとオープン・ドアーズは報告している。現地の牧師の1人はオープン・ドアーズに次のように語った。
「イスラム教から改宗した信者たちは、完全な自給自足をしなければなりません。なぜなら信者たちは、信仰の故に家族や部族、地域社会からまったく支援を受けていないからです。加えて、新型コロナウイルスによる封鎖状態で仕事ができないため、信者たちには食料を買うお金がありません。また、家賃を払えないため、住居から追い出されてしまうのです」
「キリスト教に改宗した信者たちがイスラム教の近隣住民に助けを求めると、助けてほしいならキリスト教信仰を捨てなければならないと言われます。これはひどいことです」
マレーシア東部の農村部では、新型コロナウイルスによる封鎖措置が取られる中、一部のキリスト教徒の学生が、イスラム教に改宗しない限り食料支援を受けられないと地元のモスクから言われたと話している。
オープン・ドアーズによると、ベトナム北部では100人以上のキリスト教徒(その多くが高齢者か子ども)が、信仰の故に政府から食料支援を拒否された。当局はその際、次のように言い放ったという。
「お前たちはキリスト教徒だ。だから、お前たちの家族はお前たちの神に面倒見てもらえ。政府はお前たちの家族に対して責任は取らない」