新型コロナウイルスの感染拡大は、米国人が聖書に費やす時間にも影響を及ぼしている。聖書を読む米国人が、この半年余りで大きく減少していることが最新の調査で判明した。
米国聖書協会(ABS)は22日、過去10年にわたり毎年実施してきた米国内における聖書の利用に関する調査報告書「聖書の状況2020」(英語)を発表した。米キリスト教調査機関「バーナグループ」と共同で行った今年の調査では、聖書を毎日読むと回答した米国人の割合は9%しかおらず、昨年の14%から大幅に減少し、過去10年の調査で最低となった。
今年の調査は1月と6月に実施し、それぞれ2010件と3020件の回答を得た。年内の1月と6月で比較すると、新型コロナウイルスによる外出自粛や教会閉鎖、教会活動の制限の結果、ABSが「聖書に熱心」と見なす人の割合は、1月は28%だったのが、6月は22・7%にまで低下した。一方で、過去6カ月以内に教会の礼拝に出席したと答えた人は、「聖書に熱心」でもある割合がかなり高かった。
この結果から、ABSのジョン・ファーカー・プレイク情報部長は次のように言う。
「この調査は、人々の幸福と人々の聖書に対する熱心さにおいて、教会が大きな役割を果たしていることを裏付けています。聖書に対する熱心さを向上させるには、教会を通じて人と人の結び付きを高める必要があります。新型コロナウイルスの感染拡大と今回の調査は、教会における人間関係が強まると、聖書に対する熱心さが強まり、教会における人間関係が弱まると、聖書に対する熱心さも弱まることを示しています」
米国人の5人に2人(38%)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、神を礼拝することと神に仕えることが弱められたことに、大なり小なり同意している。一方、興味深いことに、新型コロナウイルスにより近親者を亡くした人は、そうでない人と比べて聖書をより多く用いる傾向があった。
聖書を用いる機会に関する調査では、新型コロナウイルスにより同居する家族を亡くした米国人の約半数(49%)が、以前と比べて聖書を用いる機会が増えたと答えた。同様に、近隣の住人を亡くした人の36%が、親しい友人を亡くした人の33%が、聖書を用いる機会が増えたと答えた。
また、新型コロナウイルスの感染拡大が自分の信仰を強めたと思うかという問いに対しては、信仰を実践するクリスチャンのほぼ半数に当たる47%が強く同意し、38%がある程度同意した。感染して入院までした人は、聖書を用いたいという願いが平均よりも29%高く、感染者においては、聖書を用いたいという願いが24%高まった。
ABSのロバート・ブリッグス会長兼最高責任者(CEO)は調査結果を受け、米国の教会が今後数カ月間、弟子づくりに専念しなければならないことは明らかだと述べた。
「米国では、ほとんどすべての人が聖書を手にすることができますが、実際に聖書を用いる人は減りました」とブリッグス氏。「この傾向は過去数年間、一貫していましたが、2020年1月以降は加速しています。米国の教会は『生き残り』モードから、『弟子づくり』モードに回帰しなければなりません。そうするには、より多くの変革が必要になるでしょう」
しかし、米保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所」(AEI)による調査では、米国のクリスチャンのほぼ3分の2が、対面式の礼拝に再び出席することに不快感を示していることが分かっている。調査を監修したダニエル・コックス氏はAP通信(英語)に対し、次のように話す。
「(米国の)人々は言葉を濁しており、礼拝出席を快く思っているか否かについては不確かです。一般信徒の中には、対面式の集会に再び参加することにかなりの抵抗感を持つ人たちがいます」
米ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルス・リソースセンター(英語)によると、米国では31日時点で、新型コロナウイルス感染症により15万人以上が亡くなっている。感染者は約450万人に上り、現在世界で最も被害が大きな国となっている。
一方、信仰に対する新型コロナウイルスの影響に関する研究も多く行われている。シカゴ大学大学院神学研究科と同大全米世論調査センター(NORC)、AP通信が共同で行った調査(英語)によると、米国におけるあらゆる宗教の信者の60%以上が、新型コロナウイルスの感染拡大は人類に対して生き方を問い掛ける神からのしるしだと感じている。
また、米キリスト教調査機関「ライフウェイリサーチ」による調査(英語)では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、終末論への関心の高まりが指摘されている。この調査によると、調査の対象となった牧師の10人に9人近くが、聖書の終末預言の幾つかが現在の出来事の中に成就していると見ている。