新型コロナウイルスの感染拡大により、世界で多くの人が祈りに導かれている。グーグルの検索結果を75カ国で調査した研究によると、世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言した3月には「祈り」に関する検索が急上昇し、この5年で最も多い結果となった。また米国の世論調査によると、米国人成人の半数以上が、パンデミック収束のために祈ったと答えており、宗教は「特になし」と答えた人も3人に1人が祈ったという。
米世論調査機関「ピュー研究所」が、3月19日~24日に米国人成人約1万1500人を対象に行った調査(英語)によると、新型コロナウイルスの収束のために祈ったと回答した人は55%で半数を超えた。キリスト教徒に限ると、73%が収束のために祈ったと答え、毎日祈る習慣のある人は86%が収束を願って祈りをささげたという。
宗教は「特になし」と回答した人も36%が祈っており、さらに「無神論者」「不可知論者」であることを自認し、神の存在を否定する、あるいは神の存在は認識できないとする立場の人の中にも、収束のために祈ったと回答した人が6%いた。
キリスト教の教派別では、プロテスタントの福音派が82%で最も多く、次いで伝統的な黒人プロテスタント(79%)、カトリック(68%)、プロテスタント主流派(65%)の順となった。性別で比較すると、女性(65%)の方が男性(44%)よりも祈る傾向にあった。
祈りの習慣別では、祈る頻度が多い人ほど、パンデミック収束のために祈っており、「ほとんど祈らない、まったく祈らない」という人も15%は収束を願って祈ったという。年齢別では、高齢になるほど祈る傾向があり、18~29歳が35%だったのに対し、65歳以上は67%が祈ったと回答した。支持政党別では、共和党支持者が64%なのに対し、民主党支持者は46%だった。
グーグルの検索結果を75カ国で調査し、「危機の時、われわれは祈る:宗教性と新型コロナウイルス・パンデミック」(英語)を発表したコペンハーゲン大学(オランダ)経済学部准教授のジャネット・シンディング・ベンゼン氏は、新型コロナウイルスにより「祈りに対する検索強度が倍増」したと話す。
祈りに対する検索強度は、この3月が過去5年で最も高く、「クリスマスやイースター、ラマダンといった祈りの需要が増えるあらゆる主要行事を超えている」という。ベンゼン氏は「危機の時、人類はストレスの緩和やその解釈を求めて、宗教に立ち戻る傾向にあるが、新型コロナウイルスのパンデミックも例外ではない」と話している。