米キリスト教調査機関「バーナグループ」と米国聖書協会(ABS)が実施した共同調査によると、聖書を物事の判断の参考にする米国人の数が、昨年に比べると全体的に増加したことが分かった。バーナグループは調査結果を受け、「無神論が広がる中、多くの米国人の日常生活や信条に、御言葉が依然として影響を与えている」とした。しかしその一方で、「聖書を中心としている」とされる人は、昨年に比べ減少する結果になった。
バーナグループとABSは「聖書の状況2019」(英語)と題した年次調査を、今年1月15日から2月7日にかけて実施。約2千人を対象にインタビューなどを行い、聖書と米国人成人の行動や信条との関わりを調べた。
調査では14項目の質問により、人々を「聖書を中心としている」「聖書に熱心」「聖書に好意的」「聖書に中立的」「聖書に熱心ではない」の5つのタイプに分類。今年の調査では、それぞれのタイプが人口に占める割合は、5%、19%、19%、9%、48%だった。
全体的に見ると、今年の調査では2100万人が新たに知恵や導きを求めて聖書を読むようになり、聖書との関わりを深めた。また昨年「聖書に熱心ではない」と分類された人のうち、1500万人近くが、今年は聖書をより読んでいることが分かった。
しかし、聖書を中心としたライフスタイルを送る人は減少しており、無神論が全米に広がっていることも分かった。「聖書を中心としている」とされる人は、昨年は9%だったが、今年は5%に減少。これは、全米で990万人近くも減少した計算になる。さらに今年の調査では、3分の1以上(35%)が、聖書をまったく使わなかったと回答した。この数字は、2011年の25%と比べて10ポイントも増えている。
ABS(英語)は今回の調査に基づき、4160万人の米国人が聖書に対して「流動的な中間層」に位置付けられると結論付けた。「流動的な中間層」とは、日常生活における実践的な助言を得るために聖書を参考にする反面、将来的に聖書と関わり続けるかという点では予測不可能である人々のグループを指す。
また、聖書に定期的に関わる人は、そうでない人よりも経済的に寛大であることが明らかになった。昨年、慈善団体に寄付した合計金額を尋ねると、「聖書を中心としている」人は、平均千ドル(約11万2千円)を寄付したと回答。一方、「聖書に熱心ではない」人は、平均20ドル(約2240円)しか寄付していなかった。
さらに、聖書に対する熱心さは、ボランティアなどのためにどれだけ時間を割くかとも大きな関わりがあることが分かった。「聖書を中心としている」人の57%が、自分の時間を他者のために使うことに寛容であるのに対し、「聖書に好意的」な人はわずか2%で、「聖書に中立的」な人の場合は3%だった。
一方、全体の約6割が「聖書によって人生が変わった」と答えた。また、聖書に熱心である場合、違う人種の人に対する接し方や難民に対する支援、職場や学校での判断基準など、行動の仕方にも良い影響を与えていることが分かった。
ABSのロイ・ピーターソン会長兼最高責任者(CEO)は、「今回の調査は、人々が御言葉に熱心であれば、その人生が良いものになること示すものでした」とコメント。「人は(聖書の中に)知恵や希望、癒やしを見いだします。時として激動的なこの時代に、聖書は好ましい答えを提供することができるのです」と語った。
今回の調査ではこの他、人々が聖書に触れる方法が急速に変化していることも分かった。聖書を読む人の半数以上が、パソコンを使ってインターネットで聖書を読んだり(55%)、携帯電話を使って聖句や聖書の内容を検索したりしていた(56%)。またスマートフォンで聖書のアプリを使用している人は44%に上った。
この他、聖書について気楽に質問したり、説明を求めたりできる場について問う質問には、83%が教会と回答。助けを求めることのできる場についても、大半の回答者(81%)が同じく教会を選んだ。また、教会指導者に関して問われると、弱者や苦しむ人の支援者だとする回答(75%)が目立った。