ローマ教皇フランシスコは12日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂でイースターのミサを行い、世界に向けたメッセージを語った。教皇は、キリストの復活が「パンデミックの脅威にあえぐ世界の夜」に新しい炎のようにともされた良き知らせだと伝え、「苦しむ人類の傷を癒やしてくださるようにと、復活の主に眼差しを上げましょう」と呼び掛けた。教皇庁公営のバチカン・ニュース(日本版)が伝えた。
教皇は、「復活されたイエスが、すべての貧しい人々、社会の辺境に生きる人々、難民やホームレスの人々に希望を与えてくださいますように」と願い、「世界各地の都市や郊外に生きる、これらの最も弱い立場にある兄弟姉妹たちを孤立させてはいけません。特に今、社会で多くの活動が停止している中、彼らに生活のための必需物資や、薬・医療支援などが欠けることがありませんように」と訴えた。また、「現在の状況に配慮し、国々に必要な支援の供給を妨げている国際制裁を緩和し、現在の大きな困窮を前に、収支を悪化させている負債を軽減または帳消しにするなど、最貧国はもとより、すべての国々の立場に身を置くことができますように」と呼び掛けた。
また、「新型コロナウイルスの影響を受けている世界の多くの地域の中でも、特に欧州に特別な思いを向けます」と語り、「今日、欧州連合(EU)は歴史的な挑戦の前に立っています。それにEUだけでなく、全世界の未来がかかっています。革新的な解決策をも含め、一層の連帯の証しを与える機会を失ってはなりません」と訴えた。
さらに、「今は武器の製造と取り引きを続けているときではありません。そこで使われる膨大な資本は、人々の治療と救命のために使われるべきです」と強調。「シリアの長い流血の戦争、イエメンの紛争、イラクやレバノンにおける緊張を、終わらせることができますように。今この時、イスラエルとパレスチナの人々が対話を再開し、双方が平和に暮らすための、安定した恒久の解決を見いだすことができますように。ウクライナ東部に生きる人々の苦しみが終わりますように。アフリカの国々で、多くの無実の人を狙うテロ攻撃がなくなりますように」と願った。
一方で、「私たちが直面しているこの危機が、多くの人々を苦しめている他のさまざまな緊急事態を忘れさせることがありませんように」と指摘し、次のように願った。「命の主が、モザンビーク北部カーボ・デルガード州のように、重大な人道危機の中にあるアジアやアフリカの人々に寄り添ってくださいますように。戦争や干ばつ、飢餓のために、難民や避難者となった多くの人々の心を温めてください。特にリビアや、ギリシャとトルコの国境における、たくさんの移民・難民たちを守ってください。彼らの多くは子どもたちで、耐えがたい環境で生活しています。ベネズエラが具体的で即効性のある解決にたどり着くとともに、政治・社会経済・医療上の深刻な状況に苦しむ同国民への国際社会の支援が可能となりますように」
その上で、「無関心、利己主義、分裂、忘却、これらはこの時期、実に耳にしたくない言葉です。これらの言葉をすべての時代から締め出したい」と訴え、「私たちの中で怖れと死が勝るとき、すなわち、私たちの心と生活を主イエスの勝利に任せないとき、これらの態度が優勢に思われるのです。死に打ち勝った復活の主が、私たちに永遠の救いの道を開き、あわれな人類の闇を払い、終わることのないご自身の栄光の日に私たちを導いてくださいますように」と祝福した。