ローマ教皇フランシスコが大晦日の12月31日夜、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場で、集まった人々に握手をしながらあいさつをしていた際、一人の女性信徒から強引に手を引っ張られ、女性の手をたたいて振りほどく場面があった。この様子は動画で瞬く間に拡散し、教皇は翌1日1日、「私たちは忍耐を失うことが多くあります。私もそうです」と述べ謝罪した。
この出来事は、教皇がサンピエトロ広場のナティビティ(キリストの降誕)の模型を鑑賞した際、広場に集まった人々に歩きながらあいさつをしていたところで起こった。教皇は、人々と握手を交わしたり、ハイタッチをしたりしてからその場を去ろうとしたが、一人の女性信徒が教皇の手を強引に引っ張り、引き留めた。女性が手を離そうとしないため、教皇はいらだった表情を見せながら、女性の手を2回たたいて振りほどいた。この場面はソーシャルメディアで一気に拡散した。
教皇は翌1日午前に行った「神の母聖マリア」のミサで、神の子であるイエス・キリストも女性(マリア)から生まれたと述べ、「女性はいのちの源泉」だと強調。女性に対する侮辱や暴力が続いていることを批判し、「女性に対するあらゆる暴力は、女性から生まれた神(イエス・キリスト)への冒とく」だと語った。
そして、正午の「お告げの祈り」(アンジェラスの祈り)で、「愛は私たちを忍耐強くしてくれます。私たちは忍耐を失うことが多くあります。私もそうです。昨日の悪い例をお詫びします」と述べ、前日の出来事に触れて謝罪した。
この出来事については、日本でもさまざまな声が上がった。
舛添要一・前東京都知事はツイッターで、「握手で手を引っ張った信者の手をたたいたフランシスコ教皇は、『忍耐を失うことがよくある。この私もだ』と謝罪した。あのシーンは教皇の人間的な側面が見えてチャーミングだった」とコメント。「政治家は、握手を振り払うと票が減るのでできない。民主主義は選挙が軸だが、それが大衆迎合政治を推進している」などと、政治に絡めて語った。
この他、「翌日即謝罪しているのも好感が持てる」「とっさにとってしまった行動に対して、正当化するでもなく自分を擁護するでもなく、(悔い改めて)謝罪しているところこそが、教皇から学ぶべき姿勢じゃないか」など、直ちに謝罪したことを評価する声も多い。しかしその一方で、教皇が昨年3月、指輪へのキスを求める信徒たちから、手を繰り返し引っ込めてキスを拒否したことも引き合いに出しながら、「今までの教皇とは何か違う気がする」と、疑問を投げ掛ける声もあった。