フラー神学校(米カリフォルニア州)から同性婚を理由に退学させられた女性が21日、処分は不当だとして、同校を相手どり同州中部地区連邦地方裁に訴訟を起こした。同校は米国を代表する福音派の神学教育機関。女性は、退学処分は教育機関における性差別を禁止した米教育改正法第9編(通称・タイトルナイン)に違反すると訴えている。
提訴したのは、2児の母親であるジョアンナ・マクソンさん(53)。米ロサンゼルス・タイムズ紙(英語)によると、マクソンさんは神学修士号取得を目指し、2015年からオンラインと同校のテキサス州にあるキャンパスで授業を受けてきた。しかし入学後に離婚。その後は女性と交際するようになり、同性婚が全米で合法化された後、16年に女性と結婚した。
訴状によると、マクソンさんの同性婚は学内で問題視され、調査が行われた。マクソンさんは、学部長に宛てた文書で結婚相手の女性との関係を説明するなどしたが、卒業まであと数単位というところだった昨年10月、学則違反で退学処分となった。同校は、同性間の交際は認めているものの、性的基準を定めた学則では「同性愛形態の明白な性行為」は禁じている。
マクソンさんの弁護人の一人であるポール・サウスウィック氏によると、同性婚を理由に退学させられた学生が、タイトルナイン違反をめぐって訴訟を起こすのは、これが初めて。タイトルナインは、連邦政府から補助金を受けている教育機関における性差別を禁止しており、サウスウィック氏はフラー神学校が補助金を受けていることを指摘。同校が学生に対し、伝統的な性的基準を保ちたいのであれば、「公的資金の受け入れを差し控えるべき」としている。
訴状では、次のように訴えている。
「被告(フラー神学校)は、法的に承認された同性婚の挙式を理由としてマクソンさんを退学させたことにより、その性的指向に基づきマクソンさんを差別した。被告はまた、異性愛者の男子学生に対する処分よりも厳しい懲戒処分を課したことにより、その性と性的指向に基づきマクソンさんを差別した」
フラー神学校の広報担当者は、米キリスト教ニュースサイト「クリスチャンポスト」(英語)の取材に、個別の学生に関する具体的なコメントは差し控えたいと回答した。しかし、同校は「歴史的に超教派」の神学校であり、「学問の自由に腐心」しながら、「さまざまな観点から世界のキリスト教会に奉仕する」ことを目指していると説明。「私たちはあらゆる複雑な事柄の中で、さまざまな団体との関わりを保ち続けます。同時にキリスト教会の基準と信仰告白を保ちながら、信条と行動のさまざまな分野に対して、それらを適用します」と述べた。
同校によると、学生は入学申込時に学則について通告され、入学するにはそれに従うことに同意する必要がある。
タイトルナインは、性に基づく差別を禁止しているが、それが性的指向や性的自認にまで適用されるかどうかは明記されていない。そのため米連邦最高裁は今年4月、これらが争点となる訴訟3件の上告受理を決めた。3件の中には、キリスト教徒が経営する葬儀会社が、生物学的性別に基づく服務規定の遵守を拒否したトランスジェンダーの従業員を解雇したことをめぐり、従業員が葬儀会社を訴えた訴訟などがある。