米国で2番目に大きなプロテスタント教派である合同メソジスト教会(UMC)は、23日から26日まで、ミズーリ州セントルイスで特別総会を開催し、数日にわたる激論の末、同性愛はキリスト教の教義に反するとの立場を公式に維持する決定を下した。
UMCは教憲で、同性愛について「キリスト教の教義と相いれない」と明記しており、立場の変更の是非をめぐって、過去数年にわたり議論が行われてきた。
特別総会最終日の26日には、同性愛に関する立場を地域支部や地域教会が決定することを許可する「1つの教会案」と、同性愛に反対する立場を維持し、規則のより厳格な執行を求める一方、LGBT(性的少数者)支持派の教会には「寛大な抜け道」を提示する「伝統案」の2案について投票が行われた。その結果、「1つの教会案」は374票対449票で否決され、「伝統案」が438票対384票で可決された。
UMCは米国を中心とする教派だが、会員は米国内の700万人の他に、海外にも400万人がいる。特別総会には海外からの出席者もあり、米キリスト教保守系シンクタンク「宗教民主主義研究所」のマーク・トゥーリー会長はツイッターに、「アフリカやフィリピン、欧州の代表者たちが決め手となった。彼らは世界規模で成長している教会を、米国のプロテスタント主流派内で分裂をもたらしている苦境から救ったのだ。ありがとう」とコメントし、投票結果を歓迎した。
UMCは、2016年に開催した4年に1度の総会で、同性愛を含むLGBT問題に関してUMCの立場を分析することを目的とした特別委員会の設置を決定。委員には、神学的に多様な背景を持つUMC指導者らが選ばれ、分裂含みの議論を終わらせ、決裂回避を狙いとする提案を模索した。
同委は「1つの教会案」と「伝統案」を提案し、UMCの監督会は17年4月、20年開催の次期総会前に、同性愛に関わる議論に限定した今回の特別総会を開くことを発表していた。
特別総会の出席者たちは25日、最終日の本会議で投票を実施する案として、「伝統案」を選出。「1つの教会案」と、LGBT賛成派による「シンプル案」の2案は退けた。しかし「1つの教会案」は、少数派の反対意見という扱いで、「伝統案」と共に26日に投票が行われた。
特別総会では、同性愛賛成・反対の両者から多くの意見が表明された。コートジボワールから出席したブレ・レオン・ネイサン・アケ氏は「伝統案」を支持し、「聖書は御言葉に忠実であり続ける必要があると教えています。それは神の計画であり、神の御心です。御言葉に忠実であることは聖書的な姿なのです」と訴えた。
一方、同性愛を公言するアッパー・ニューヨーク会議のJ・J・ウォレン代表は、「弟子たちが幼子を追い払おうとした際、イエスは幼子を近くに来させるように言われました」と聖書の場面を引き合いに出し、「私たち(性的少数者)を追い払わないでください。(主の元に)来させてください」と熱弁を振るった。
UMCの教会としては米国内で最も大きい「復活教会」(カンザス州リーウッド)のアダム・ハミルトン主任牧師は、「伝統案」は「逆進的」だと反発。「伝統案」は「中心主義者や進歩主義者」を疎外するものだと語った。
ハミルトン氏は「伝統案」の支持者に対し、「皆さんは、これまでにその苦しみを真に経験したことのない無数の人々を発奮させました。その人たちに行動を起こさせたのです。彼らは怒り、うろたえ、傷ついています」と語った。
UMCは、1939年にメソジスト監督教会、メソジスト・プロテスタント教会、米国南メソジスト監督教会が合同してできた「メソジスト教会」と、46年にキリスト合同ブレザレン教会と福音教会が合同してできた「福音合同ブレザレン教会」が、68年に合併して誕生した。メソジスト派の教会としては世界で最も大きい。プロテスタントの中でも主流派に位置付けられるが、教派内の神学的、政治的立場は幅広く、共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領が所属する一方で、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官も所属するなどしている。