2011年から始まったナッシュビルとの交流であるが、14年に大きな転機を迎えることとなった。日本とナッシュビルの懸け橋になることを願い、合計4回のツアーを企画してきた。その中で拡大した交流もあり、この絆がさらなる発展を期待できるようになっていった。
その矢先、中心的な役割を担わせていただいていた筆者が、大阪の教会へ異動ということになったのである。今までとは活動拠点を変えなければならず、またこういった国際的な働きの基盤となる教会の意識が全く見えない状況で、今までのようにナッシュビルから来られる方々をお迎えすることは難しい、そう判断せざるを得なかったのである。
しかし、多くの方が「このままフェードアウトではもったいない」と訴えてこられた。中には「私でできることなら、何でもさせていただきますよ」とすら仰って、具体的な提案を持ってこられる方も。
こういった後押しを受け、一つのアイデアが生まれた。それは、教会や所属団体に依存しない日米交流の懸け橋となるボランティア団体の設立である。以前からそういう構想はあった。しかし、既存の教会が受け入れ態勢を整えつつあったので、そこまで深く考えなくてもいいか、と思っていた。だが、新たに赴任する教会はおよそそういった文化がない。そこで生み出されたのがJAG(Japan Association for Gospels)である。
本団体は現在まで存続し、今なお活動の幅を拡大している。Facebookページはこちらから。
「来日滞在中のクリスチャン・ミュージシャンたちの活動を支援して、彼らがより多くの方々と交流できるように働きかけるボランティア・ネットワーク」と銘打っている。各集会を切り盛りし、そこで得られた収益をそのまま来日するミュージシャンたちのために使う、いわゆるゼロベース基本のボランティア団体である。
2011年から毎年のように行ってきた「ナッシュビルツアー」、そしてクライストチャーチクワイアの来日と、交流の機会が多く与えられた。その交わりを通して日本の福音宣教に必要なものを3つ挙げることができるようになった。それはこの3つである。
1)音楽 2)英語(または外国語) 3)国際交流
特に若者たちへの福音宣教には、この3種は必須である。そして、どれにもキリスト教は深く関わっている。例えば1)音楽であれば、ゴスペルはもちろんのこと、ジャズやロック、最近ではゴスペル・ラップなど、いろんな形態で福音の本質を伝えることができている。
2は、日本人特有のものかもしれない。どこに主要因があるのかは分からないが、日本人は英語に対して大きなコンプレックスがある。米国に対して、と言ってもいいかもしれない。かつて、筆者がリアル大学生だったころ、米国人と言えば白人、金髪、青い目だった。しかし、今ではこんな偏った見方はしない。むしろブラック(アフリカ系米国人)は若者たちのあこがれの存在のようで、特にスポーツや芸術面ではその傾向が著しい。
3に関しては、一般的に若い世代は外国の友人を持ちたがるし、今のようなSNS社会であれば、それは容易に達成できることになる。
これらを踏まえ、図1のようなイメージを抱いた。
外国からのミュージシャンが来日し、音楽としての gospel(小文字)を披露してくれる。しかし、彼らは単に自分の音楽を提供しに来ているわけではない。最大の目的は「キリストの福音」すなわち Gospel(大文字)を伝えるために来日してくれるのである。
それなら、彼らの願いとしては「gospel から Gospel へ」ということになるだろう。これを橋渡しし、願わくは未信者の心の中に音楽としての gospel を通して、Gospel が伝えられることを可能にすべく、JAGはその働きを進めていけばいいことになる。
さらに図2のような拡張性も見いだせるだろう。
それは、こういった働きを一教会で担うのはとても大変なことである。事実、2013年までの3年間で教会は大いに疲弊した側面もある。だから日本の諸教会で彼らを受け入れ、gospel の恵みを(クリスチャン、ノンクリスチャンを問わず)多くの方々が得られるようになればいい、と考えるに至った。
だからJAGは Japan Association(日本の共同体)として Gosdpel“s”(福音=良き知らせ、の複数形)となっているのである。
この方針を胸に、2014年3月末、筆者は再びナッシュビルへ向かった――。
◇