聖書を客観的かつ正確に読み取ることに適した聖書の学び方「インダクティブ(帰納的)バイブルスタディー」(IBS)を学ぶセミナーが6、7の両日、東京・国分寺労政会館で開かれた。IBSを50カ国以上で教えるダン・フィンフロック氏が講演し、6日には約80人が参加した。
フィンフロック氏は1985年、牧会していた米国の教会を離れて家族と共にフィリピンに移住。注解書も手に入れることのできない現地の貧しい牧師たちに6年間にわたってIBSを教えた。帰国後、キャンパス・クルセード・フォー・クライスト(CCC)創設者の故ビル・ブライト氏の依頼でソビエト政権末期のロシアに入り、現地のクリスチャンリーダーたちを育て、IBSを教える働きは世界中に広がっていった。
IBSは、「観察」「解釈」「適用」の3つのステップを通して、私的解釈に偏らず、聖書を正確に読み取り、効果的に学ぶことを目的としている。IBSを学ぶためにフィンフロック氏が作成したテキストは、すでに40以上の言語に翻訳され、多くの牧師やクリスチャンリーダーたちの聖書の学びを助けてきた。
6日午前のセミナーでフィンフロック氏は、実際にマルコによる福音書6章30~44節を読み進めながらIBSのメソッドを説明した。まずは「観察」。前後の文脈を確認することから始め、一節ずつ丁寧に読み込み、本文が伝える事実を正確に読み取っていく。
次の「解釈」では、前後の文脈や本文が伝える事実を基に、登場人物たちの心情や筆者が本文を記録した意味や目的などを考察。最後の「適用」では、要点を自分の人生と生活に当てはめ、自分が従うべき見本はあるか、捨て去るべき罪はあるか、避けるべき誤りはあるか、宣言すべき約束はあるか、従うべき命令はあるか、などを見ていった。
フィンフロック氏は、聖書から事実を正確に引き出し、正しく解釈することの重要性を強調した上で、「聖書は私たちにとって青草といえる。そこには羊を養うのに十分な栄養がある。しかし、ある牧師は聖書から青草を取るのでなく、茶色い草で羊を養っている」と指摘。「律法学者のように、誰かの言っていることをただおうむ返しのように繰り返すのではなく、イエスのように神の言葉を、権威を持って伝えてほしい」と語った。
IBSの学びでは、聖書全体を文書構成の種類によって、▽事実に基づく物語、▽手紙、▽たとえ話、▽詩書、▽預言書の5つに分け、それぞれに最適な読み方を身に付けていく。参加者は、用意された実践課題を解きながら、IBSの具体的な手法を学んでいった。
IBSのセミナーが日本で開催されるのは今回で3回目。第1回から共催者兼通訳者として関わり、自身もIBSを牧会の中で実践するジーザス・コミュニティ牧仕の桜井知主夫(ちずお)氏は、次のように語った。
「聖書の読み方やメッセージの方法には、少なくとも3種類があります。1番目は『帰納的に学ぶ』。聖書を客観的に詳細に学び、聖書から事実を引き出す方法です。2番目は『演繹(えんえき)的に学ぶ』。つまり、まず自分が考えたテーマがあり、自分が言いたいことをサポートするために聖書箇所を探し出す方法です。3番目は『たたき台方法』。この方法でメッセージを伝える人は、冒頭で聖書箇所には触れますが、その後は自分が言いたいことだけを滔々(とうとう)と述べるだけで、二度と聖書本文に戻ってくることはありません。日本には、プロテスタント教会に通う兄弟姉妹が60万人いるとされていますが、帰納的に聖書を学ぶ人たちが何割になるのか、とても心配させられる状況です。
神の言葉である真理が私たちを自由にします。教会堂がとても立派でも、神の言葉が権威を持って語られなければ、主イエスの聖徒たちは成長しません。神の言葉がストレートに愛を持って語られなければ、誰も自由にならないし、主イエスの身丈に向かって成長もしません。この帰納的に聖書を学ぶ方法は、聖書から事実を引き出す上でとても役に立ちます。とても素朴な学びですが、とても奥が深い学びでもあり、心からお薦めできます。セミナーで学んだ人たちの聖書理解が多くの人たちの助けになり、主イエスにあって父なる神に栄光が帰るように祈らせていただきます」
セミナーの内容は、ユーチューブで公開されている。