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コヘレト書を読む

コヘレト書を読む(21)「王の言葉を守れ」―申命記で伝えられている王の在り方から― 臼田宣弘

2019年4月18日06時46分 コラムニスト : 臼田宣弘
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関連タグ:コヘレトの言葉(伝道者の書)臼田宣弘聖木曜日(洗足木曜日)

1 誰が知恵ある者でありえよう。誰が言葉の解釈を知りえよう。知恵はその人の顔を輝かせ、その顔の険しさを和らげる。2 私は言う。神との誓いのゆえに、王の言葉を守れ。3 気短に王の前を立ち去ろうとするな。不快なことに固執するな。王は望むままにふるまうのだから。4 王の言った言葉が支配する。だれも彼に指図することはできない。5 命令に従っていれば、不快な目に遭うことはない。賢者はふさわしい時ということを心得ている。6 何事にもふさわしい時があるものだ。人間には災難のふりかかることが多いが、7 何事が起こるかを知ることはできない。どのように起こるかも、誰が教えてくれようか。(8:1~2、聖書協会共同訳 3~7、新共同訳)

前回まで5回にわたって7章を読んできました。私個人は、コヘレト書の12の章の中で、7章が一番おもしろいと感じています。それに比して、8章は少々難解でとっつきにくい感じがします。今回からその8章を学びます。ここでは「王の言葉を守れ」(2節)と言われています。「神の言葉を守れ」であれば信仰者として素直に受け入れられると思いますが、人間である王の言葉を守れというのは、受け入れがたいのではないかと思うのです。8章が難解でとっつきにくいと申し上げますのはこのあたりです。

しかしコヘレトは、「神との誓いのゆえに、王の言葉を守れ」と言っています。これは、コヘレトが自らを王に模し、「神はつらいことを人の子らの務めとなさったものだ」(1:13)としていることからすれば、「王が神に誓ったのだから、あなたは王の言葉を守れ」という意味でありましょう。

ところで、モーセ5書の中には「申命記」があります。「申」には再びの意味がありますので、「申命記」は「再び命ずる書」という意味です。モーセが荒野の40年においてイスラエルの民に伝えてきた神からの教えを、再び命じている書です。これはモーセがピスガの山(ネボ山)で亡くなった日に語られたものです。その申命記の中に、やがてカナンの地に入り王を立てることになるときの王に関する教えがあります。それを見てみましょう。

あなたが、あなたの神、主の与えられる土地に入って、それを得て、そこに住むようになり、「周囲のすべての国々と同様、わたしを治める王を立てよう」と言うならば、必ず、あなたの神、主が選ばれる者を王としなさい。同胞の中からあなたを治める王を立て、同胞でない外国人をあなたの上に立てることはできない。王は馬を増やしてはならない。馬を増やすために、民をエジプトへ送り返すことがあってはならない。「あなたたちは二度とこの道を戻ってはならない」と主は言われた。王は大勢の妻をめとって、心を迷わしてはならない。銀や金を大量に蓄えてはならない。彼が王位についたならば、レビ人である祭司のもとにある原本からこの律法の写しを作り、それを自分の傍らに置き、生きている限り読み返し、神なる主を畏れることを学び、この律法のすべての言葉とこれらの掟(おきて)を忠実に守らねばならない。そうすれば王は同胞を見下して高ぶることなく、この戒めから右にも左にもそれることなく、王もその子らもイスラエルの中で王位を長く保つことができる。(申命記17:14~20)

イスラエルの王は、神を畏れ律法を守る者、すなわち神に誓いを立てている者でなければならないのです。旧約聖書を読みますと、ダビデ王朝の歴代の王は必ずしもそうではなかったようです。神に背いた王が多かったようです。しかしモーセを通して教えられているイスラエルの王は、神に誓いを立てている者です。コヘレトはそれ故に「王の言葉を守れ」と言っているのだと私は解釈しています。

太陽の下の世界における出来事は、「何事が起こるかを知ることはできない」(7節)とコヘレトは理解しています。そうであるが故に、「神に誓いを立てている王」の「命令に従っていれば、不快な目に遭うことはない」(5節)と、コヘレトは言うのです。このことは、すでにこのコラムでお伝えしている、コヘレトの思想である「神の業の絶対肯定」ということと関連があるように思えます。それは当時流布していた黙示思想とは一線を画し、「今を生きよ、神が今なさっていることをふさわしいことと受け止めよ」ということなのです(本コラムの第18回を参照)。

4月14日は今年の「棕櫚(しゅろ)の主日」でした。過越の祭りのためにエルサレムに来ていた群衆は、ナツメヤシ(棕櫚)の枝を持って、「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように、イスラエルの王に」と叫びながらイエスを迎えたとあります(ヨハネ12:13)。このことを記念するのが「棕櫚の主日」です。この時の群集の叫びにあるように、新約の時代である今日では、イエス・キリストこそが王です。私たちはその王の命令を守るよう導かれています。それは次の命令(掟)です。

あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。互いに愛し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる。(ヨハネ13:34~35)

本日4月18日は、今年の「洗足木曜日」です。イエスが弟子たちの足を洗ったことを記念する日です。自ら弟子たちの足を洗ったイエスが、彼らに語った掟が上記のものです。しかしこの掟は、今日の私たちに対する掟でもあるのです。私たちは、王であるイエスが命じたこの言葉を守るように導かれているのです。(続く)

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◇

臼田宣弘

臼田宣弘

(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:コヘレトの言葉(伝道者の書)臼田宣弘聖木曜日(洗足木曜日)
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