日本ルーテル神学校・ルーテル学院大が主催する「一日神学校」が23日開催され、同校・同大の母体となる日本福音ルーテル教会、日本ルーテル教団に所属する全国の教会から約600人が参加した。当日は参加者全員で捧げる開会聖餐礼拝で始まり、同校・同大の教師陣による講義のほか、参加教会が開くミニショップや「こどもしんがっこう」、ラウンジコンサート、チャペルコンサートなど、様々な催しが行われた。
一日神学校は、1969年に鷺宮キャンパス(東京都中野区)から現在の三鷹キャンパス(東京都三鷹市)へ移転する以前から行われてきた同校・同大の伝統行事。初期は9月27日の創立記念日前後の一週間を「神学校週間」として、ルーテル諸教会との交流や公開講義、学生による研究発表などが行われてきたが、現在はともに礼拝を捧げ、講義を受け、学生と交わるという、まさに一日神学校を体験できる機会となっている。
開会聖餐礼拝は同大チャプレンの河田優氏の司式で執り行われ、江藤直純校長がルカによる福音書24章13‐35節から、「見抜く力、歩み出す勢い」と題して説教。「私達が気づいていてもいなくとも、ともに歩んでくださるキリストがおられる」「逆風に打ち勝つ、(主が与えて下さる)命と勇気と希望を持ちましょう」と伝えた。
一日神学校の柱となる講義は今年、神学、社会福祉、臨床心理の3分野で合計9つの講義が行われた。「神と共に生きる―古代イスラエルの礼拝―」(大串肇教授・旧約聖書学)、「生命の質と生活の質」(市川一宏学長・社会福祉政策、高齢者福祉)、「傷つけられた子どものSOSの受け止め方」(加藤純准教授・児童臨床心理、児童福祉)など、同大・同校の教師陣がそれぞれの専門分野で特色ある講義を展開。参加者はそれぞれ興味のある講義を選択し、その日だけは「神学生」として真剣に教師の話に聞き入った。
上村敏文准教授(日本文化論、比較文化論)は「武士道とキリスト道」と題して講義。「日本にキリスト教がなぜ定着しないどころか、場合によっては忌避されるのか」と問い、司馬遼太郎がプロテスタンティズムと武士道が非常に似ていると指摘したことなどを挙げ、武士道との対比から「キリスト教」ならぬ「キリスト道」の可能性について模索した。
当日は、神学生寮や図書館も開放され、オープンキャンパスとして大学説明会も開催。お昼には各教会が出店するミニショップでそれぞれ手作りの料理やお菓子、小物が販売され、午後には音楽サークルによるコンサートや在学生によるスピーチと、参加者は普段訪れることの少ない神学校で楽しいひと時を過ごした。
一日神学校では毎年、いくつかの教区を招待教区として招いており、地方の教区からも参加しやすいよう考慮されている。今年は日本福音ルーテル教会の東教区甲信・東北地区と、日本ルーテル教団の関東地区・福島分区の諸教会が招かれた。来年は同校・同大ともに創立100周年を向かえ、一日神学校ではなく記念の特別行事が予定されている。