6月29日に可決・成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(「働き方改革」一括法)をめぐり、日本カトリック正義と平和協議会(会長・勝谷太治司教)は17日、政治家や経営者に向けた「お願い」(15日付)を発表した。
同協議会はその中で、カトリック教会は労働を「神の似姿として創造された人間による、神の創造のわざへの参与」と考えてきたと説明。しかし、過労死や過労自殺が頻発する近年の日本社会で同法が成立したことにより、「かえって労働時間規制が緩和され、雇用者は労働者を際限なく、しかも一定賃金で労働させることが可能となりました」と指摘。「このような事態においては、『労働』はもはや『神の創造のわざへの参与』であるどころか、人を殺す凶器でさえ、あり得るでしょう」と警鐘を鳴らしている。
さらに同法の成立により、ローマ教皇フランシスコが使徒的勧告『福音の喜び』(2013年)で取り上げている「使い捨て可能な商品」として、労働者が扱われることが、法律上認められたともいえると指摘。その上で、政治家に対しては、同法の危険性に気付き、廃止に向けて動くよう求め、経営者に対しては、過労死や過労自死の問題に目をつぶらず、労働者に対する一層の配慮を求めた。
同協議会は、同法の問題点として以下の3点を挙げている。
- 時間外労働の上限規制が、過労死ライン(月80時間)を超える時間(最大月100時間未満)で設定され、月末・月初に残業を集中させれば、月をまたぐ形で30日間に160時間もの時間外労働を行わせることが可能。
- 同法の高度プロフェッショナル制度では、雇用者は「専門かつ高収入」の労働者に対する残業代を支払う義務(労基法37条)、休憩を与える義務(同34条)、週1回の休みを与える義務(同35条)などの免除が認められる。
- しかし同制度の対象となる専門職については、厚生労働省の省令で定められ、国会の決議なくその範囲を広げることができる。選択制の「健康確保措置」が設けられたが、その選択肢のうち「時間外労働が月80時間を超えた場合の健康診断」を受けさせさえすれば、24時間48日連続労働や、年間6千時間労働も法律上可能となる。