世界最大の教会学校「メトロ・ワールド・チャイルド」(MWC、以下メトロ)を創立したビル・ウィルソン氏が6日、日本橋公会堂(東京都中央区)で講演した。教会関係者ら約150人を前に、「特別な賜物を持つ人だけでなく、神はごく普通に見える一人の信仰者に偉大なビジョンを与えられる」と語り、「神から与えられる偉大なビジョンの持つ力を本当に理解し、それをつかんで変化を体験してほしい」と訴えた。
12歳で母親に捨てられた経験を持つウィルソン氏。自分と同じような境遇にいる子どもたちを救おうと、ニューヨークのスラム街で教会学校を始めた。その活動は、米国内にとどまらず、アジア、東欧、アフリカ、インド、中南米へと急速に広がり、現在では世界各地で毎週20万人近い子どもたちがメトロの教会学校に通っている。
いつも世界の極貧地域で暮らす子どもたちに寄り添うウィルソン氏の活動は、まさに命懸けだ。2003年には、ニューヨークのブルックリンで路上生活者を訪問中に強盗に襲われ、口に銃口を入れられたまま発砲された。頰を打ち抜かれる重傷を負ったが、奇跡的に一命を取り留め、治療を受けながらすぐに活動を再開した。
昨年10月には、シリア国境近くの難民キャンプでの活動中に狙撃された。防弾チョッキにより命は守られたが、後ろから銃撃を受けたときの強い衝撃で肋骨が折れ、肺に穴が開いた。さらに、倒れたときに頭を強く打ちつけて頭蓋骨を骨折。そこからも奇跡のカムバックを果たした。
ウィルソン氏が日々直面するのは「生きるか死ぬかの現場」だ。ケニアのある村に住む5歳ぐらいの男の子を撮った1枚の写真がスクリーンに映し出された。その口には、村を取り仕切る麻薬の売人たちが与えたという注射器が。売人たちは、水で溶かした薬物を注射器に入れ、ジュース代わりにいつも村の子どもたちに飲ませていたという。男の子の体にも、すでに中毒症状が出始めていた。
「どんなに平凡で弱い私たちであっても、イエス様が共にいてくださり、偉大なビジョンをくださるなら、こんなとんでもない状況からでも必ず何かが起こる。誰かが、神の与えられるビジョンには力があることを信じて、立ち上がらなければなりません」
ウィルソン氏がその村を訪れた2週間後、まさにその地域でメトロの教会学校が始まり、会場に入り切れないほどたくさんの子どもたちが集まった。その背後には、ケニアに住む子どもたちを救いたいと、神からのビジョンを与えられて現地に乗り込んだ一人の英国人女性の決断があった。教会学校に集まった笑顔あふれる子どもたちの写真をスライドで見せながら、ウィルソン氏は「一人の女性に与えられた偉大なビジョンが現されると、こんなにも力があるのです」と証しした。
劣悪な環境に苦しむ子どもたちの現状を伝えながら、ウィルソン氏はヨハネによる福音書20章にあるイエスの復活の場面で、ヨハネがイエスのいない墓の中をただ見たのではなく、そこにイエスの復活を「見て、信じた」(8節)と強調し、「あなたは今、何を見て、何をビジョンとしていますか」と問い掛けた。
「一人の人が価値ある変化を生み出すことができるのです。ごく普通の、名もない一人のクリスチャンの男性が、みすぼらしい一人の少年を救ってくれた。ここにいる私が、まさにその結果なのです」
メトロ・ワールド・チャイルドの活動についての詳細はホームページを。