公開セミナー「聖書的な子育て」が22日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で開催された。講師は、聖書に基づいた親の在り方や育児について各地で講演しているイ・キボク氏(韓国オンヌリ教会協力牧師)。3日間にわたる「家庭回復リバイバルセミナー」(CGNTV、久遠キリスト教会など主催)の1日目で、イ氏はこの日、「子どもの愛し方」「思春期の子育て」の2つをテーマに講演した。
米ゴードン・コンウェル神学校で相談心理学の博士号を取得したイ氏は、韓国のトーチ・トリニティー神学大学院でキリスト教相談学教授などを歴任。韓国の「ツラノ母の学校」「結婚予備学校」「聖書的な親教室」などで主講師を務める専門家だ。午前の講演「子どもの愛し方」では、▽神の愛を伝える、▽親を敬い、従順することを教える、▽御言葉と祈りで育てる、の3点から聖書に基づいた育児について語った。
神の愛を伝える
イ氏はまず「神の愛」とは「(愛される)資格がないのに愛してくださる愛」と説明。成績が下がったり、大切な物を壊したりするなど、子どもたちが「失敗」したときにこそ、「それでも愛している」と伝えることで、無条件的な神の愛を伝える必要があると語った。
実例の1つとして、イ氏は自身の育児の例を挙げる。イ氏の娘が中学生だったころ、成績がどんどん落ちた時期があった。その時、イ氏が娘に伝えたのは「たとえ勉強がうまくできなくても、愛している」ということだった。成績は落ちるばかりだったが、数カ月後、娘が急いで家に帰ってきた。「成績が上がったのかな?」と思ったが、娘は「成績表をもらったけど、また落ちた」と話した。成績が落ち続けること自体は、親として悩ましいことだったが、娘の姿に素直さを見たという。「失敗したものを持って、家に戻って来た。資格がない自分を見せに来た。なぜなら、お母さんが成績が悪くても怒らず、愛してくれることを分かっていたから」とイ氏。「神の愛を実際に行うと、神の愛を自分自身も感じるようになる。そして、子どもたちにそれを示すとき、子どもたちもそれを分かるようになる」と語った。
イ氏は、非行に走る多くの青少年が家に戻れない理由は、このように「失敗」した自分を受け入れてくれる親がいないからだと話す。「子どもたちは親に愛されたいと思って頑張っています。手遅れになる前に、愛しているということを表現してください」と語った。
親を敬い、従順することを教える
イ氏はまた、子どもたちには神の愛をもって接する一方、親を敬い、親に従順することを教えなければならないと話した。「子どもたちの言いなりになるのが愛ではない。親は子どもたちの奴隷ではない」。ダメなことはダメと言い続ける必要がある。駄々をこねてもダメと言い続け、また両親の間でも態度を一致させるべきだという。そうすることで、子どもは親の言うことに従順することを学んでいく。
旧約聖書のサムエル記上に登場する祭司エリには、2人の息子がいたが、息子たちは神を軽んじ、神に対して多くの罪を犯していた。しかしエリは、息子たちをとがめずそのままにさせた。最終的に2人の息子は戦死し、それを知るとエリも亡くなるが、イ氏は「エリは神よりも子どもたちを尊く思ってしまった」と指摘する。またこの教訓から「子どもを神のように扱ってはいけない。子どもたちが親に従い、そして神に聞き従うように育てるとき、神が用いることができる」と語った。
御言葉と祈りで育てる
3つ目のポイントは、御言葉と祈りをもって育てること。テレビやスマートフォンなど、子どもたちの関心を引きやすいものが多く存在する現代は、特に注意が必要だ。幼い時から御言葉と祈りに親しませるようにすれば、子どもたちは聖句も良く暗唱し、さらに5、6歳にもなれば、大人同然に心から神に祈り求めるようになると伝えた。
「うちの子は大丈夫」とは言えない思春期
続いて午後の講演「思春期の子育て」では、10代の子どもたちは両親よりも友人たちの影響を大きく受けると説明。「うちの子は大丈夫」とは、どの親も言えない時期だと語った。その上で、自身が約10年間教鞭を執った韓国のキリスト教主義大学である韓東(ハンドン)大学で出会った男子学生の例を紹介した。
学生は、小さな頃は教会学校にも通うまじめな良い子だったが、中学2年の頃、些細なきっかけで不良グループに入ってしまう。タバコや飲酒のほか、あらゆる悪いことをしたという。やがて大学受験の時期になるが、結果は韓東大学以外すべて落第。「入学したら逃げてやろう」と心中で思いながら、実家のあるソウルから韓東大学のある地方へ向かった。しかし、学生は新生した先輩たちに触れて変わり、やがて洗礼を決心する。受洗時の証しでは、不良時代を振り返り、記憶にはっきりと残る1つの出来事を語った。ある夜、酒を飲んで家で寝ていると、頬に熱い水滴のようなものが落ちるのを感じた。目を開けると、母親が涙を流して祈っていたのだ。その学生は「お母さんの涙があったから、今洗礼を受けられる」と言って、洗礼を受けたという。
イ氏は、この学生の場合は母親の祈りもあり立ち直ることができたが、街にはまだ多くの迷える青少年たちがいると指摘。「青少年を抱かなければ、教会の未来も家庭の未来もない」と言い、特に教会では青少年向けのグループを作るなどし、対応していく必要があると強調した。
1対1で子どもとデート
一方、思春期の子どもに対する親の接し方としては「1対1でデートする」ことを勧めた。短い時間でも、一緒に軽食をするなどして時間を過ごすことだという。しかしその際、アドバイスや小言を言うことは厳禁。むしろ、親の悩みや弱さを話すことがよい。親が自身の弱さを話すことは、子どもを大人として扱っているしるしとなる。また、話し掛けても話し返してくれないような場合であっても、一緒にいるだけで効果はあるという。その他、スポーツなど互いが歩み寄れる共通のものを持つのも良いと紹介した。
最後にイ氏は、先月末に亡くなったビリー・グラハム氏について言及した。長男のフランクリン氏は、今は立派な伝道者として活躍しているが、10代の時は父であるビリー氏を大いに悩ませる存在だったという。しかし、ビリー氏はフランク氏を神に委ね、そして委ねた以上の存在として戻って来た。
また、ビリー氏は亡くなる前にある文章を残している。それは「ビリー・グラハムが死んだというニュースを耳にしても信じるな。私は今まで以上に生きている。(天国に)住所を変えただけ。神の臨在の前で本当に生きているのだ」という内容だったという。
イ氏は「イエスを信じるというのはこういうこと。皆さんが本当にそのように信じれば、子どもが立ち返って帰って来る。10代の子どもは親の信仰が本物か、偽物かを見ている」と強調。まずは親たちがしっかりとした信仰に立ち、そして「子どもの魂に責任を持つ親になるべき」と訴えた。
家庭回復リバイバルセミナーは、23、24の両日は会場を久遠キリスト教会(東京都杉並区阿佐谷北2ー25ー8)に移して行われる。23日(金)は「子どもの愛し方」(午後7時〜8時半)、24日(土)は「夫と妻」(午後2時〜3時半)と「家庭を守るために」(同3時50分〜5時10分)がテーマ。詳しくはフェイスブックを。