「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に正式に登録されたことを受け、カトリック長崎教区の髙見三明大司教が公式コメントを発表した。同教区は、潜伏キリシタン関連遺産の構成資産の1つである「大浦天主堂」(長崎市南山手町)の所有者。高見大司教は「関連遺産が世界中のすべての人々にとって価値を有すると認めていただいたこと、日本初のキリスト教関連の世界遺産となることを大変ありがたくうれしく思います」と述べた。
関連遺産の世界遺産登録は、2001年に登録を目指す会が発足してから、名称変更など紆余曲折を経て、17年かけて実現した。髙見大司教は各方面の関係者に感謝の意を示し、関連遺産は「日本における470年に及ぶ、他に類を見ないキリスト教の歴史につらなり、それを物語る『証し』」だと述べた。
公式コメントでは、イエズス会のスペイン人宣教師フランシスコ・ザビエルらによるキリスト教伝来から、徳川家康による禁教令とそれに伴うキリシタンの殉教と潜伏、そして幕末に建設された大浦天主堂に潜伏していた信徒が現れた「信徒発見」など、一連の歴史を概観。キリスト教が伝来した当初、1600年代初頭には日本の全人口約1200万人のうち50万人近くまで信徒が増えたと推測されることや、禁教令により殉教者が数万に及んだこと、表面的には仏教徒を装いながらも、秘密組織を作って潜伏しながら信仰を守り通したことなどを紹介した。
禁教下の状況については「キリストを信じること自体が違法でしたので、『改心』すなわち棄教か、いのちを失うかの二者択一を迫られるという理不尽な扱いを受けましたし、周囲からは差別も受けました」と指摘。「しかし、信者たちは為政者に抗うことなく、声に出さずとも信教の自由という基本的人権を貫き、この世限りのものよりも神への信仰を優先させ、永遠に価値あるものを希望し続けました。彼らのこの生き方は崇高でさえあります」とつづった。
「世界遺産と認められた教会はそのほんの一部」としつつも、「キリシタンの繁栄と潜伏と復活の歴史を静かに証ししています」と述べた。
1946年に長崎市で生まれた髙見大司教は、潜伏キリシタンの家系に生まれ、妊娠中の母の胎内で被爆した胎内被爆者でもある。コメントでは「世界遺産と認められた教会だけではなく、他の教会を訪れるとき、それぞれの背後にある人々の歴史に思いを馳せ、こころの糧にしていただければ幸いです」と述べた。
長崎教区では、関連遺産の世界遺産登録を記念して、7月15日(日)午後7時から、大浦天主堂で特別講演会を開催する。長崎県世界遺産登録推進課の岩田正嗣氏が「ユネスコが認める普遍的価値」、長崎教区司祭の古巣馨(かおる)神父が「カトリック教会から見た意義」と題して講演する。参加無料。詳細はホームページを。