中東バーレーンの首都マナマで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)第42回世界遺産委員会は30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を世界文化遺産として登録することを決定した。江戸時代のキリスト教弾圧の中、隠れながらも信仰を守り通した独特の文化的伝統の証拠として評価された。
潜伏キリシタン関連遺産は、長崎、熊本両県にある12資産で構成される。潜伏キリシタンがフランス人神父に信仰を告白した「信徒発見」の場である国宝の「大浦天主堂」(長崎市)や、島原の乱で一揆軍が籠城した「原城跡」(南島原市)などが含まれる。
当初は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として登録を目指し、2007年には世界文化遺産の暫定一覧にも記載されていた。16年の登録を目標に準備を進めてきたが、世界遺産委の諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)から内容の見直しを指摘され、一度推薦を取り下げて構成資産などを再検討。禁教期に焦点を絞り、名称も現在のものに改称して昨年、再度推薦書を提出していた。今年5月に入って、イコモスが世界文化遺産への登録を勧告する評価を出し、世界遺産委での正式な登録決定を待つばかりとなっていた。
国内の遺産では、「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県)と「姫路城」(兵庫県)が1993年に初めて世界文化遺産に登録され、最近では13年の「富士山」以降6年連続で登録されている。世界自然遺産4件を加えると、国内の世界遺産はこれで22件となる。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産は下記の通り。
- 原城跡(長崎県南島原市)
- 平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳〔やすまんだけ〕)(同平戸市)
- 平戸の聖地と集落(中江ノ島)(同)
- 天草の﨑津集落(熊本県天草市)
- 外海(そとめ)の出津(しつ)集落(長崎県長崎市)
- 外海の大野集落(同)
- 黒島の集落(同佐世保市)
- 野崎島の集落跡(同小値賀町)
- 頭ヶ島(かしらがしま)の集落(同新上五島町)
- 久賀島(ひさかじま)の集落(同五島市)
- 奈留島(なるしま)の江上集落(江上天主堂とその周辺)(同)
- 大浦天主堂(長崎市)
1)潜伏キリシタンの文化的伝統が形成される契機となる出来事が考古学的に明らかにされている「原城跡」、2)潜伏キリシタンがひそかに信仰を維持するためにさまざまな形態で他の宗教と共生を行った集落(「平戸の聖地と集落」「天草の﨑津集落」「外海の出津集落」「外海の大野集落」)、3)信仰組織を維持するために移住を行った離島部の集落(「黒島の集落」「野崎島の集落跡」「頭ヶ島の集落」「久賀島の集落」「奈留島の江上集落」)、4)潜伏キリシタンの伝統が終焉(しゅうえん)を迎える契機となった「信徒発見」の現場であり、各地の潜伏キリシタン集落と関わった「大浦天主堂」で構成される。