国宝の大浦天主堂(長崎市)の敷地内に、復活祭(イースター)となる4月1日、「キリシタン博物館」がオープンする。大浦天主堂は、約250年にわたって潜伏していたキリシタンが現れた「信徒発見」の場。博物館のテーマは、その時の言葉「ワタシノムネ、アナタトオナジ(私の信仰、あなたと同じ)」で、日本初公開となるド・ロ神父のロザリオなど130点を展示する。
敷地内にある旧羅典(ラテン)神学校(国重要文化財)と、旧長崎大司教館(県有形文化財)の2棟を博物館としてリフォームした。共に地上3階、地下1階の建物で、旧神学校の1階はこれまでも「キリシタン資料室」として用いられてきた。
大浦天主堂は信徒発見の舞台であったほか、日本最初の殉教者である「日本二十六聖人」にささげられた教会でもある。旧神学校では、潜伏キリシタンが信仰を明かしたフランス人宣教師プチジャン神父ゆかりのロザリオや、旧神学校を設計したド・ロ神父の十字架やロザリオなどを展示し、大浦天主堂を中心とした出来事を紹介する。一方、旧大司教館は日本のキリスト教史を全体をたどる構成。キリシタン大名・高山右近の書状や、1622年に長崎で殉教した信徒55人を描いた絵画「元和(げんな)の殉教」などを展示する。
大浦天主堂は、今年の世界文化遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成遺産の1つ。カトリック長崎大司教区が遺産登録を見据え、昨年から博物館の開設を計画していた。
17日に報道向けの内覧会が開かれたことで、国内各紙が伝えた。この日はちょうど、信徒発見から153年目の日。博物館の名誉館長である長崎大司教区の高見三明大司教は地元の西日本新聞に対し、「潜伏キリシタンはもちろんだが、さまざまな視点からキリスト教の全体像を学べる場所にしていきたい」と語った。
博物館の開館に伴い、大浦天主堂の拝観料は大人が600円から千円(団体は大人1人500円から900円)に引き上げられる。中高生、小学生、障がい者については、一般、団体ともに変更なし。拝観者には無料パンフレット「大浦天主堂物語」(日本語、英語、韓国語)が配布されている。
信徒発見:1865年に大浦天主堂で潜伏キリシタンが発見されたこと。前年完成した大浦天主堂の献堂式が同年2月17日に行われ、大勢の見物人が来たが、それから1カ月後の3月17日、客にまぎれて浦上の潜伏キリシタンたちが訪問。聖堂内で祈るプティジャン神父に「ワタシノムネ、アナタトオナジ」と明かした。その後、長崎県や福岡県の各地から、うわさを聞き付けた潜伏キリシタンたちが訪れるようになった。潜伏期間は約250年、7世代に及んだ。