インドネシアの首都ジャカルタで2月26日〜28日、爆弾テロなどに関わったとして収容されていた元受刑者124人と、テロの生存者や犠牲者の遺族ら51人が対面するイベントが行われた。両者の和解を目的とした同国初の大型の試みで、国家テロ対策庁が開催した。一方、心の整理ができていないなどとして、参加を見合わせた生存者や遺族も多くいた。
「これは、この種のイベントとしては初めてのもので、和解の精神を育成することを願いとしてます」。同庁のスハルディ・アリウス長官は、カトリック系通信社UCAN(英語)にそのように語った。
社会復帰した元受刑者の中には、過去数十年間にさまざまなテロ活動に関わった人々が含まれている。2002年12月に南スラウェシ州マカッサルにあるマクドナルドの店舗で3人を殺害した、元イスラム過激派戦闘員のモクタール・ダーン・ラウさんもその1人だ。
ラウさんは「私は悔い改めていますが、他の人たちが私のように過激な道に進まないよう、政府の教育事業を支援するつもりです」と言う。
スマルノと名乗る別の男性は、バリ島の爆弾テロ事件に関与した。「私は自分がしたことを深く悔やんでいます。あれほど多くの被害者が、兄弟や姉妹だったとは思いませんでした」
ウラさんは「一生続く障害に苦しむ生存者たちと会うのは、つらく悲しいことです」と続ける。「私はそのような影響があるとは想像していませんでした。申し訳なく思い、被害者の方々に謝罪しました」
一方、AFP通信(英語)によると、生存者や遺族の多くは直接的な対面は無理があるとして、イベントには参加しなかった。「会場には彼ら(元受刑者)が大勢います。私たちは心の準備が整っていません」。不参加を決めたインドネシア生存者財団顧問のニー・ルー・アーニアティさんはそう話す。「私たちは彼らを赦(ゆる)していますが、私たちが感情的になった場合どうなるか予測できません」
02年に発生し、200人余りが犠牲となったバリ島の爆弾テロ事件で夫を失ったアーニアティさんは、これまでの小規模なイベントは功を奏しなかったと話す。「一部の生存者はとても感情的になり、元過激派に憤慨しました」と振り返る。
しかし、イベントに出席した被害者らは赦しの重要性について語った。
フェビー・ファーマンシャフさんは03年、ジャカルタの高級ホテル「JWマリオットホテル」で爆弾テロに遭い、片手が不自由になり、いまだにやけどの痕が数カ所残っている。しかし、「私も憤りに身を任せれば、彼らと何の違いもないはずです」と言う。「私のようにすぐ彼らを赦すよう、他の生存者に強要はできません。ですから、赦す覚悟がないなら来ないでくださいと、他の生存者たちに伝えました」
世界最大のイスラム教国であるインドネシアでは近年、テロ容疑の逮捕者が増加している。16年は163人が逮捕されたが、昨年はそれよりもさらに増え、172人が逮捕された。
ジャワ島中部のジョグジャカルタ特別州スレマン県では先月11日、現地のカトリック教会を狙ったテロ事件があった。この事件では、イスラム過激派の男がドイツ人司祭カール・エドモンド・プリエさん(81)を含む4人を、日曜日のミサの最中に刃物で襲い、負傷させた。
男は警察に撃たれて取り押さえられたが、イエス・キリストの像を剣で斬首するなどした。警察はその後、男が過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘に参加するため、シリアへ渡航を図った前歴があったことを突き止めている。