世界で最もイスラム教人口の多いインドネシアで、ブラジル・リオデジャネイロの有名な「コルコバードのキリスト像」よりも大きい、世界最大のキリスト像の建設が計画されている。
像の建設が計画されているのは、ニューギニア島西側のインドネシア領であるパプア州。英文メディア「ココナッツ・ジャカルタ」(英語)が4月25日に掲載した「デティック・ニュース」(インドネシア語)の翻訳記事によると、同州のジュリ・マンバヤ公共事業部長は「この像は国際級になる見込みで、世界で最も壮大なものになる」と述べた。
像は州都ジャヤプラのプンカク・グヌング・スワジャ山の頂上に建てられる予定で、費用は2260万〜3760万ドル(約2530億〜4220億円)に上ると見込まれている。人口の28・5パーセントが最低の貧困生活をしているパプア州にとって相当な金額になる。
像の高さは少なくとも165フィート(約50メートル)になり、土台の高さは328フィート(約100メートル)になるため、高さ98フィート(約30メートル)、土台124フィート(約38メートル)の「コルコバードのキリスト像」を大幅に上回ることになる。
マンバヤ氏は、「ジャカルタのモヌメン・ナシオナル(独立記念塔「モナス」)のように、イエス・キリスト像にエレベーターを設置し、イエスの目を通してジャヤプラの街全体が眺望できるようにします」と話している。
一方、像の建設には地元議会の承認が必要で、着工にこぎ着けるかはまだ未確定だ。しかし、もし建設されれば、ボリビアの「平和のキリスト像」(高さ112フィート=約34メートル)よりも高くなる。
世界最大のキリスト像ランキングは、過去数十年で数回入れ替わっている。2015年のUSAトゥデイの記事(英語)によれば、これまでのところ、世界で最も高いキリスト像は、ポーランド西部にある高さ118フィート(約36メートル)の「クライスト・ザ・キング」だ。王冠や土台を含めると高さ172フィート(約52メートル)になる。
アフリカで最も大きいキリスト像とされている、ナイジェリアの「ジーザス・デ・グレイテスト」(高さ28フィート=約8・5メートル)は、根強い宗教的敵意がある時代に希望をもたらすため、同国のある実業家が建設した。ナイジェリアはキリスト教徒とイスラム教徒がほぼ半々に分裂した状態にあり、09年以来、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の反乱に直面している。像を建設した実業家は、宗教的に異なる国民が「調和のうちに暮らす」ことを願い、キリスト像を建設したと語っている。
インドネシアのキリスト教人口は、総人口2億5800万人の1割未満に過ぎない。一方、イスラム教人口は87・2パーセントに上る。しかし、人口の上では世界最大のイスラム教国であるものの、イスラム教が国教として定められているわけではない。キリスト教(カトリック、プロテスタント)、ヒンズー教、仏教は認められており、国民はいずれかに分類、登録されている。憲法前文には、「唯一神への信仰」「公平で文化的な人道主義」など5つの徳目が記されており、パンチャシラ(「パンチャ」は「5」、「シラ」は「徳」を意味する)として重視されている。
首都ジャカルタの現知事でキリスト教徒のバスキ・T・アホック・プルナマ氏は、強硬なイスラム教徒の大勝と報じられた先の選挙戦で敗北し、間もなく知事を退任する。それに伴い、ジャカルタのキリスト教徒らは不確かな将来に直面することになる。
迫害下のキリスト教徒を支援している「米国殉教者の声」のトッド・ネトルトン氏は、キリスト教徒とイスラム教徒は調和を保つべきだと、クリスチャンポストに語った。「(インドネシア)キリスト教徒たちが抱いている疑問は次のことだと思います。『全体としてのこの社会における私たちの役割とは何なのか。パンチャシラの思想は死んだのだろうか。それとも私たちは、依然として共に調和して生きようとしているのだろうか』」と述べ、同国内で宗教間の対立が深まっていることを危惧した。