西武池袋本店(東京都豊島区)の屋上「食と緑の空中庭園」に、ブラジル・リオデジャネイロのコルコバードの丘にそびえ立つキリスト像が、極彩色豊かな巨大壁画となって出現した。世界で活躍するウォールアーティストのエドゥアルド・コブラ氏(40)が、西武池袋本店とコラボレーションによって実現したこの壁画は、縦11メートル、横56メートルと国内最大級で、コパカバーナビーチの美しい海岸線と山々、シンボルであるキリスト像がダイナミックなタッチで描かれている。
壁画を制作したコブラ氏は、ブラジルのサンパウロ在住。サンパウロ中部にある高さ56メートル のビルの壁にブラジル建築界の巨匠オスカー・ニーマイヤーの肖像を描いたことで、その名を世界中に轟(とどろ)かせた。色彩豊かなリズム感のある作風を特長とする。
これまでに20カ国以上でウォールアートを描いているコブラ氏は、日本について日本人の礼儀正しさや、几帳面なところに驚き、日本の文化にあこがれを抱くようになったという。今回のそごう・西武とのコラボレーションについて「東京に壁画をつくることは、アートを身近にし、歴史に残る斬新な企画だと思います」と語る。
今回の壁画は、コブラ氏とチームスタッフ5人が約2週間かけて制作した。コブラ氏は「作品のインスピレーションはリオデジャネイロです。町の様子とその象徴、新世界七不思議の1つである、コルコバードの丘のキリスト像を壁画の中に入れました。それに、リオのビーチ、サーフィン、自然の美しさも描いています。これらは『世界で一番ハッピー』と選ばれた町の特徴です。『東京からリオへとつながる扉になってほしい』という思いで描きました」と絵に込めた思いを話す。
2013年から毎年この時期にブラジルフェア「Oi! BRASIL」を開催してきたそごう・西武では、近年、世界に注目されるブラジルアートにもスポットを当ててきた。中でも壁に絵を描くグラフィティーアートに注目し、14年にサンパウロを視察に訪れていたブラジルフェア担当者が、実際にコブラ氏の作品を見てすぐにコンタクトをとり、翌年、西武渋谷店の壁面に作品を描いてもらい、大好評となった。
さらに今年は、昨年リニューアルをした「食と緑の空中庭園」を「Oi! BRASIL2016」の拠点としたことから、その象徴となるアート(スポット)を西武渋谷店に引き続きコブラ氏に依頼した。コブラ氏もよりスケールの大きな壁画を描きたいと考えていたことから、今回のコラボレーションが実現した。コブラ氏は、ブラジル以外でここまで大きな壁画を描いたのは初めてだと明かし、ぜひ多くの人に見てほしいと呼び掛けている。
実際に壁画を見た人からは、「スケールの大きさにびっくり。これ本当に描いたんですか?」とか「これまで数々の絵画を見てきたけれど、こんな大きさは初めて。カラフルな色彩感がこの場所にとても合っていて素敵ですね」といった声が上がっている。
来月5日にはリオデジャネイロオリンピックも開催する。東京・池袋に現れたコルコバードの丘にそびえ立つキリスト像とリオの風景は、オリンピック中はもちろんのこと、9月いっぱい展示される。