8日午前から9日にかけて、フィリピンのローマ・カトリックの信者約150万人が、マニラで行われる毎年恒例の「ブラック・ナザレ祭」の行進に参加し、約1世紀前に作られた等身大のイエス像を運び、奇跡を祈った。
AFP通信の報道によると、9日の午前2時ごろ、裸足の男女が首都マニラからキアポ教会まで狭い町通りの約4・5マイル(約7・2キロ)の道のりを行き、「ブラック・ナザレ」と呼ばれる像を運んだ。キアポ教会は「ミノール・バシリカ・オブ・ザ・ブラック・ナザレン」としても知られる。
フィリピンのカトリックの信者は、イエスの像を白いタオルで拭くと、人生に奇跡をもたらす神秘的な力を持つと信じている。
「もし家族の誰かが病気になったら、そのタオルやハンカチを濡らして体を拭くのです。そうすると医者いらずです」と、熱心な信者のダン・ヴィラコルタさんは話した。
赤十字は、少なくとも1人が死亡し、220人が負傷、めまい、低血糖に伴う症状で治療を受けたと伝えた。主な原因は、多くの群衆が木製のイエス像に近づこうと試みることで、体力を極度に消耗することだ。
キアポ教区のモンシニョール・エルナンド・コロネル司祭は以前、「人々は、神と個人的な関係を持っているのでその像に近づくのです」と語ったとされている。「人々は私のところに来て、主が彼らに奇跡をなさったというのです。熱心な信者にとっては、主はリアルな存在です」
AP通信によると、警察官と兵士約5千人が、20時間にわたる行進を警備するために配置された。治安部隊の隊員は、無作為に人々の荷物をチェックし、持ち込みを禁じられている武器、爆竹、傘を含むとがっている物品を所持していないか確認した。
このような厳重な警備が行われたのは、過激派組織「イスラム国」(IS)によるパリの連続テロ事件のような事件が起こる潜在的な危険があったこともある。
東南アジアの最貧国の一つフィリピンでは、人口の約80パーセントがカトリックの信者だ。犯罪発生数は多く、南部はイスラム過激派により圧政を受けている。
いばらの冠をかぶり十字架を背負うこの像は、1606年にメキシコからマニラまで、スペインの宣教師によってガレオン船で運ばれたと考えられている。当時、像を載せていた船が火事にあったが、焼け焦げたこの像は崩壊を免れた。
この像は、イエスが十字架につけられる刑場への道のりで、十字架を背負う様子を描いた。ブラック・ナザレの熱心な信者の多くは、彼らの貧困と日々の苦悩が、像に表されたキリストの受難とつながっていると信じている。