過激派組織「イスラム国」(IS)の襲撃により国外に逃れていたキリスト教徒たちが帰還しつつあるイラク北部のニネべ平原で、ISに破壊された家屋約680棟が再建された。キリスト教迫害監視団体「オープン・ドアーズ」と現地の協力団体の支援によるもので、一部の町ではキリスト教徒の数が少しずつ増えているという。
イラク北部では3年半余り前、武装したISの戦闘員がキリスト教徒や他の宗教少数派に対し、イスラム教への改宗や重税、あるいは死を迫り、数十万人が近隣諸国に避難した。しかし、イラク軍などの有志連合が昨年7月、ISが拠点としていたイラク第2の都市モスルを奪還。近郊のニネベ平原も数カ月前に解放され、避難していたキリスト教徒たちが徐々に帰還し、町の復興に取り組んでいる。
世界60カ国余りで活動するオープン・ドアーズは、かつてイラク最大のキリスト教徒の町とされていたカラコシュで286棟、またニネベ平原の他の地域で392棟と、計678棟の家屋を再建するのに貢献した。
「主が預言者イザヤを通して語ったように、神はイラク最大のキリスト教都市カラコシュで『新しいこと』(イザヤ43:19)をされている」と、オープン・ドアーズは報告(英語)で述べている。
「商店やレストランがオープンし、子どもたちは学校に通い、モスルに向かうバスはモスル大学の学生たちで毎日いっぱいです。また、バフディダ(カラコシュのアラビア語の名称)と呼ばれるこのアッシリアの町ではキリスト教徒の数が増えています」
現地では、オープン・ドアーズ以外のキリスト教団体も支援を行っている。
カラコシュのキリスト教指導者であるジョージ・ジャホラ神父によると、昨年中に修復予定だった2658棟のうち、すでに1054棟が修復された。共にカトリック系の慈善団体である「コロンブス騎士団」や「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード(困窮している教会への支援)」(ACN)などがこれらの支援に貢献した。カトリック系ニュースサイト「タブレット」(英語)によると、ACNはイラクのキリスト教徒約2千世帯を支援するため、すでに約500万ドル(約5億3千万円)の支援を行ったという。