今年7月に過激派組織「イスラム国」(IS)から解放されたイラク北部の都市モスルで、帰還したキリスト教徒たちが、3年ぶりに故郷でクリスマスの礼拝を行った。IS解放後初めてのクリスマスとなり、参加者は、依然として国外や国内の別の地域で避難生活をしている人々が、それぞれの故郷に戻れるようにと祈りをささげた。
クリスマスの礼拝が行われたのは、現在モスルで唯一の教会である聖パウロ教会(カルデア典礼カトリック教会)。爆弾が貫通した窓枠には白い布が掛けられ、教会には依然としてIS支配時の傷跡が生々しく残っている。英BBC(英語)によると、礼拝は武装した車両が警備する中で行われた。
カルデア典礼カトリック教会のトップであるバビロン総大司教ルイス・ラファエル・サコは礼拝で、モスル、イラク、そして全世界に平和と安定が来るように祈るよう、信徒たちに呼び掛けた。
モスルは、IS解放から間もなく半年がたとうとしているが、現地のキリスト教徒たちはいまだに生活を再建できていない。米ラジオ「ボイス・オブ・アメリカ」(英語)は、ファディさんという信徒の言葉を紹介している。「私たちはこの状況を見て悲しくなりました。ここは、私たちの町、祖父母たちの町です。ここで暮らし育ちました。学校、大学、教会を建設し、家族や友人たちもここにいました」
同じく今年に入ってISから解放されたニネベ平原では今月初め、聖ジョージ教会の再聖別式が行われた。モスル北東に位置するニネベ平原は、もともとキリスト教徒が多く住んでいた地域。同教会は住民の大半がキリスト教徒の町テレスコフにあり、ニネベ平原でIS撤退後に再開される最初の教会となった。
アルビル大司教バシャル・マッテ・ワルダは再聖別式で、「ISはキリスト教徒の影をここから消したかったのです。しかし、そのISがいなくなり、テレスコフのキリスト教徒たちが戻ってきました」と語った。また「聖ジョージ教会が再開されただけでなく、以前よりもずっと美しく素晴らしい教会になったことに感動しています。これこそ、神様の摂理です」と続けた。
イラク・キリスト教救援協議会(ICRC)の設立者であるユリアナ・タイモラ氏は、冬のさなかにあってイラク国内にはまだ約8万人ものキリスト教徒が帰還できずに、避難生活を余儀なくされていると言う。
タイモラ氏によると、IS占領時の2014年には、15〜18万人のイラク人キリスト教徒が避難を余儀なくさせられたが、これまでに約5万人が故郷に帰還した。イラク国外では、トルコに約4万5千人、ヨルダンに約2万人のキリスト教徒が避難しており、イラク北部で避難生活する人は8万〜10万人いると考えられている。
■ モスルの聖パウロ教会で行われたクリスマスの礼拝