インド中部マディヤプラデシュ州で14日夜、クリスマス・キャロルを歌っていたカトリック教会の神学生30人と司祭2人の計32人が拘束される事件があった。理由は、ヒンズー教徒の住民を改宗させようとしたからだという。一方、神学生と司祭らは、現場にいたヒンズー至上主義者らから暴行を受け、車を放火されるなどしたが、警察は傍観していただけだったとし、インド・カトリック司教協議会(CBCI)は警察を非難している。
CBCI(英語)によると、拘束されたのは、同州サトナにある聖エフレム神学校の神学生ら。クリスマス・キャロルを歌うのは30年余り続く取り組みで、毎年この時期に行っていたという。
CBCIは、神学生らが暴行を受けていたのに傍観し、さらに彼らを拘束したことは、ヒンズー至上主義者と警察の「共謀」だと非難。32人について警察に尋ねた別の司祭8人も拘束されたことを明かした。また、警察署の外の状況は「拘留中の人々と面会を希望する者でさえ、接近することができないほど、非常に敵対的だった」と説明した。
ロイター通信(英語)によると、ヒンズー至上主義グループ「バジュラン・ダル」のメンバー1人が、聖書やイエス・キリストの写真を配布したり、キャロルを歌ったりして改宗を試みたとして、神学生らを告発したという。バジュラン・ダルは、ナレンドラ・モディ首相率いる与党インド人民党(ヒンディー語名:バラティヤ・ジャナタ党、BJP)と関連のある団体として知られている。
神学生のアニッシュ・エマニュエルさんは、「私たちはキャロルを歌っていただけでしたが、強硬なヒンズー教徒が私たちを攻撃し、私たちがインドをキリスト教国にしようと懸命になっていると言いました。それは本当ではありません」と語った。
CBCIは、神学生らがキャロルを歌ったことで、人々を改宗させようとしているという告発を「軽薄でくだらない」と批判し、次のように述べた。
「正しい考え方をするすべてのインド人は、『宗教警察』を気取ったこれらのテロリストを恥じ、顔を伏せるでしょう。私たちは、彼らが寛大で平和を愛するヒンズー教の兄弟のように語ってはいないことを絶対的に確信しています」
英国パキスタン・キリスト教協会(BPCA、英語)によると、拘束された神学生と司祭らは、地元の政治家の介入によりすでに釈放されている。同協会のウィルソン・チョードリー議長は、「クリスマスに非常に近い時期に起こったこの憂慮すべき事件は、モディ政権下でのインドの少数派に対する敵意が深刻なレベルになっていることの証拠です」と述べた。
インドでは、2014年の総選挙でヒンズー右派政党のインド人民党が勝利して以来、キリスト教徒に対する迫害が急増している。
迫害監視団体「オープン・ドアーズ」の今年8月の報告(英語)によると、2016年に報告があったインド国内の迫害件数は441件だったが、今年は第1四半期に248件の迫害があり、さらに6月末までにその数が410件まで増えたという。オープン・ドアーズと協力する現地のパートナー団体はこの報告で、次のように述べている。
「過激派に殴られたとき、キリスト教徒たちは主に頭部や体の重要部分を負傷しました。この暴行犯たちは、キリスト教徒たちが死んでも気にしません。彼らは、政府(そして裁判官)が自分たちの側にいるので、自分たちが罰せられないと知っているのです。ほとんどの場合、暴行犯は罰せられません」