現天皇が来年4月末で退位し、同5月に新天皇が即位することを受け、日本カトリック司教協議会は22日、関連する一連の行事において、政教分離原則(憲法第20条など)を厳守し、国事行為と皇室祭祀(さいし)の区分を明確にすることを要望する文書を発表した。
政府は20日、天皇の退位と即位に伴う儀式の在り方を検討する式典準備委員会の第2回会合を首相官邸で開催した。報道によると、この日は主に、焦点となっていた退位の儀式の概要を決めた。即位の儀式については、1989年に現天皇が即位した際の事例を踏襲することがすでに決まっている。20日には、神道の宗教色が濃い「大嘗祭(だいじょうさい)」についても、前回の事例を踏襲し、国事行為としては行わないことを確認した。
しかし、カトリック司教協議会によると、前回の大嘗祭は「宗教色はあるが公的性格を持つ皇室行事」として、国費が支出され、三権の長も出席した。また、国事行為とされた「即位の礼」にも宗教的伝統が導入されたとし、同協議会は「これらは日本国憲法の政教分離原則にそぐわない」としている。
日本国憲法の政教分離原則について同協議会は、「日本がかつて天皇を中心とした国家神道のもとで戦争を行い、アジアの人々をはじめ世界の多くの人々の人権と平和を侵害した歴史への反省から生まれた」と説明。「この不幸な歴史を決して忘れず、同じ轍(わだち)を踏まないようにする責任を日本政府は負っています」と訴えている。
前回の大嘗祭をめぐっては、知事が公費を使って参加したことなどが政教分離原則に違反するとして、鹿児島県で住民訴訟が起こった。しかしこの訴訟では、最高裁で合憲判断が確定している。
政府は3月中旬にも、天皇の退位・即位に関わる一連の儀式の位置付けや日程などを含めた基本方針をまとめる方針。
大嘗祭(だいじょうさい、おおなめまつり):天皇が即位後初めて行う一世一度の新嘗(にいなめ)の祭。即位した天皇が、天照大神(あまてらすおおみかみ、日本神話の最高神)と天神地祇(てんしんちぎ、天と地のすべての神々)に新穀を供え、天皇自らもそれを食する儀式。