同性婚合法化の是非を問う全国調査が行われていたオーストラリアで15日、賛成が61・6パーセントと、過半数を超えたことが発表された。これを受け、婚姻法の改正法案が議会に提出され、年内にも同性婚が合法化される見通し。その一方、反対派や、結婚は異性間のものだとする同国内の主要な教会は、改正後も各自が信じる結婚観を表明したり教えたりできる言論の自由や教育に関する権利が尊重されるよう求めている。
調査は「同性同士の結婚を容認するために法律を改正すべきか」を問うもので、9月中旬から約2カ月間にわたって行われた。与党側は当初、投票義務のある国民投票の実施を求めていたが、野党側の反対により、自主投票となる郵便形式の調査に切り替えられた。郵便形式の調査の場合、結果は拘束力を持たないが、同性婚の合法化自体は野党も容認している。一方、与党内の保守派は、信教の自由の保護のため、一部の条件で同性婚の挙式を拒否できる条項を加えた修正案を提出する方針。
結果を受け、オーストラリア・カトリック司教協議会は同日、声明を発表。会長のメルボルン大司教デニス・ハートは、たとえ同性婚が合法化されても、結婚の本質を1人の男性と1人の女性の間の結合と理解するカトリック教会の見解を変えることはないと述べた。
ハート大司教は、今後もカトリック教会は性的少数者の尊厳を尊重していくとしたが、反対票を投じた38・4パーセントの人々にも言及。「国会議員は、良心と宗教的自由の確かな保護を整えることで、結婚の定義を変更することに反対した480万人以上のオーストラリア国民の懸念を認識し、尊重しなければなりません」と述べた。
また、「これらの保護は、オーストラリア国民が引き続き結婚に関する自身の見解を表明することができるようにし、信仰に基づいた教育を行う学校が伝統的な結婚の理解を教え続けることができるようにするとともに、諸団体がその価値観と一致した方法で働き続けることができるようにしなければなりません」と強調した。
オーストラリア聖公会のシドニー大主教グレン・デイビスも同日、声明(英語)を発表した。デイビス大主教は、民主的な手続きを経たものである以上、結果を尊重すると表明したが、自身の結婚観までも変えることはないと述べた。その上で、すでに同性婚が認められている西洋諸国では、合法化後、結婚に関して別の意見を持つことが制限されるような状況があることを指摘。結婚の定義を変えることに反対したキリスト教徒や他の人々の言論の自由や信教の自由を尊重しなければならないと警告した。
一方、オーストラリアの公共放送ABC(英語)はこの日、賛成派が歓声を上げて結果を歓迎する様子を伝えた。マルコム・ターンブル首相は、オーストラリアの歴史における偉大な瞬間だとし、次のように語った。
「今日は本当に偉大な1日です。とても喜ばしい日です。圧倒的多数のオーストラリア国民が同性のカップルに手を差し伸べ、肩に手を回して『私たちはあなたがたを愛し、尊敬しています。あなたがたの関係は、他のあらゆる人々の関係と等しいのです』と言ったのです」
同性婚反対キャンペーンを行ってきた「結婚連合」のライル・シェルトン広報担当は、この結果に「当然失望している」とする一方、「オーストラリア国民の決断を受け入れ、尊重する」と述べるコメント(英語)を発表した。
シェルトン氏はその上で、「私たちは今、言論の自由や信教の自由に関する制限を防ぎ、両親の権利を守り、オーストラリアの子どもたちを教室で急進的なLGBTIQ(性的少数者)の性と性教育にさらされることから守るためにできることをするでしょう」と述べ、今後も継続して活動していくことを伝えた。
調査は選挙権を持つ18歳以上を対象にして行われ、投票率は79・5パーセントと高く、多くの関心を集めた。ロイター通信によると、婚姻法の改正法案に関する審議は27日から本格的に始まり、与党側は12月7日までの議会通過を目指している。法案が可決されれば、オーストラリアは同性婚を合法的に認める26番目の国となる。