オーストラリアでは9月から、選挙権を持つ18歳以上の国民を対象に、同性婚の合法化の是非を問う郵便調査が実施される。調査を前に、賛成・反対の各派がキャンペーンを行っているほか、賛成派の中には、性的少数者に対する偏見を助長するとして、ボイコットを呼び掛ける人々もいる。このような中、オーストラリア発祥のメガチャーチであるヒルソング教会の牧師は、信仰と聖書の教えに関わる問題でもあるとして、国内のクリスチャンに対して調査へ参加するよう呼び掛けている。
同性婚の合法化をめぐっては、与党の保守連合が、投票義務のある国民投票の実施を求めていたが、野党が過半数を占める上院で今月初めに否決。次善策として、自主投票となる郵便調査の実施が決まった。9月12日から投票用紙の発送が始まり、投票期間は11月7日まで。同15日に結果が発表される。
ヒルソング教会のブライアン・ヒューストン主任牧師は、教会のウェブサイトで発表した声明(英語)で、調査の重要性を強調し参加を呼び掛けるとともに、結婚を1人の男性と1人の女性の間の結合だとする自身の立場を明示した。
「私は、すべてのクリスチャンに対して、同性婚に関する郵便調査に参加するよう強く勧めます。この問題に関するあなたの見解が何であれ、それは明らかに私たちの社会構造を決めるために重要な意見なのです。結婚の定義を変えることは広範囲に影響を及ぼすため、どんな社会によっても軽々しくなされるべきではありません。選ばれた少数ではなく、全オーストラリア人がこのプロセスに加わるべきです」
「クリスチャンにとっては、この問題は信仰と聖書の教えの問題でもあり、反対の立場の人々によって決してあざけられたり、軽視されたりしてはならないことです。私は、結婚が1人の男性と1人の女性の間のものだと、神の言葉が明らかに教えていると信じます。以前の声明で言及したように、使徒パウロが同性愛の主題に関して聖書の中で書いていることもはっきりしています」
郵便調査の結果は法的拘束力を持たないが、賛成多数となった場合、与党側は同性婚を合法化する結婚法の改正案を年内にも議会に提出する見通しだ。野党側は同性婚を容認する立場であるため、改正案が議会に提出されれば、可決される公算が大きい。これまでの世論調査では、同性婚を支持する人々が過半数を占めており、賛成派のジョージ・ブランディス司法長官は今月初め、公共放送ABCの番組で、今年のクリスマスまでには同性婚が合法化されるとする見通しを示している。
豪オーストラリアン紙が実施した世論調査によると、同性婚に賛成する人は63パーセントに及ぶ。しかしその一方で、62パーセントはまた、結婚の定義を変更することに反対している宗教法人に対して、何らかの法的保護が与えられるべきだと考えているという。
だが、ヒューストン牧師は、賛成派・反対派の両者とも、互いの主張を理解し、尊重しようとする姿勢に欠けていると述べている。
賛成派に対しては、「結婚の定義を変えようとしている人たちの中には、信仰の確信と偏見を混同している人々がいます。彼らは、キリスト教(と他の宗教の)信仰が、信者にとっては極めて重要であること、また実際に寛容で自由な社会の実現に不可欠であることを理解しなければならないのです」と述べ、信仰に基づいて同性婚を容認しない立場の人々への理解を求めた。
一方、「悲しいことに、ある人々はキリスト教を使って、同性愛の人々を疎外したり、非難したり、幸せを求めたいという彼らの願いを否定したりしています」とコメント。「キリスト教の牧師として、私はいつも聖書と私の個人的確信に従って教え、説教しますが、他の人々のために代わりに選択することはできません。神は人間を自由意思を持つ存在としてお造りになりました。そして私は、自分と違った考えを持つ人を含め、すべての人々を大切にします」と述べた。
同性婚は、米国や英国、カナダ、南アフリカなど、英語圏ではすでに合法化されている国が多い。世界各地に教会を持つヒルソング教会は、これらの国々にも存在するが、ヒューストン牧師は、教会活動が妨げられることはないと指摘。「私たちの聖書的確信を妥協するよう、法的に強制されない限り、私たちはこの調査結果が何であっても、まったく快適に活動し続けることができます」と述べた。