テレビ朝日「お昼の独占!女の60分」で、「バイソン木村」(全日本女子プロレス)とシングル対決をすることになった私は、通常半年かけて行うメニューを、ジャガー横田コーチ指導のもと、わずか5日間で一気に叩き込んで行きました。
5日間といっても、1日わずか3時間! 午前中、全女で特訓後・・・午後は、ニッポン放送「鶴光の噂のゴールデンアワー」の生レポーター、その後、船越英一郎氏主催劇団「マガジン」のロックミュージカルの本番(ヤクルトホール)と、かなりハードなものでした。
プロレス特訓による筋肉痛と打撲の痛みを、アイシングスプレーでごまかしながらステージに立つ日々・・・おまけにプロレスの練習で声もつぶしてしまい、芸能人御用達の耳鼻科に行き、声を出すための注射を3本打って演じた日もありました。
そして・・・いよいよ、バイソン木村と戦う日がやって来ました。受け身も技も完璧とは言えない状態で臨む試合に、体の震えは止まりませんでした。Y氏に、波動を送っていただく約束をしていても、リングシューズの中に「観音カード」を入れ、「観音ペンダント」を首の後ろに貼り付けていても、不安と恐怖はまったく消えませんでした。
「死刑を待つ囚人の気持ちって、こういうものなのだろうか?」・・・そんな想像ばかりが頭を巡り、おかしくなりそうでした・・・しかし、気が付けば、私はリングに立っていました。目の前には、2つのチャンピオンベルトを身にまとい、トンファー(カンフーの武器)を振り回しながら、鋭い眼光で威風堂々と立つ「バイソン木村」がいました!
・・・「自分の置かれている状況が現実なのか?!」・・・恐怖を通り越し、理解できないほど茫然(ぼうぜん)としていました。「なんとしても、タレントとして、仕事をやり遂げる!」・・・その意地だけで、なんとか立っていました。
そして、試合開始!・・・握手を求めた私の手をパチンとはね返し、背を向けたバイソン! その背に叫びながら飛び乗った私!・・・そこで開始のゴング!・・・夢中でバイソンの髪の毛をつかみ振り回す!・・・が、あっさり振り飛ばされリングに転がる! それでもすぐさま立ち上がり、ロープに飛んでエルボー! 続いてナックルパンチ! ボディアタック!
・・・しかし、まったく動じないバイソン・・・私を、たった1発のチョップでリングに叩き落とす。立ち上がっても、立ち上がっても倒され、次第に体力も意識も無くなっていく・・・セコンドのジャガーさんの指示を出す声も・・・観客の歓声も・・・聞こえなくなっていました。
遠のく意識の中・・・技らしい技が出せない私の心に、悔しい思いが募り始めました・・・「このまま終わってたまるか!」。その闘志を力に、なんとかコーナーポストを背に立ち上がったのです!・・・その時!・・・「飛んでみろ! 受けてやる!」と言うバイソンの怒声が轟きました!
・・・その挑発に戦気を取り戻した私は、一気にコーナーポストに駆け上がり、トップロープに立ったのです!・・・本番前、 初めて上ったトップロープの想像以上の高さに、恐怖で足がすくんでいた私に、「無理しなくていいよ。でも、もし本番で勇気が出たら飛んでごらん」・・・と、ジャガーさんに言われた言葉が、頭の中でこだましました!!
次の瞬間、恐怖は消え、両手を高く挙げ、バイソン目掛け、フライングボディプレスを決めたのです! 気付けば、バイソンが私の下に倒れていました。「ボディスラム!!」・・・ジャガーさんの声が聞こえました! 私は渾身の力を振り絞り、バイソンの体を抱え上げ、勢いよくマットに叩きつけました!!
そしてすかさずフォールへ!! しかし、カウントは1・5で難なく返され・・・そこで完全に力尽きた私の体を、バイソンは、いとも簡単に「逆エビ固め」で締め上げ・・・あまりの重さにまったく息ができなくなりました!! まさにエビのように強烈に反らされ、背骨が「ミシミシッ」と、鈍い音を立て始めました!!・・・ギブアップをしようにも、胸の上に乗られて、体を思い切り反らされ、タップがまったくできなかったのです!!
・・・「死ぬ!!!!」・・・本当に、そう思いました!!!「神様!! 助けて!! 助けて!! 神様!!!!」・・・必死に心で叫び続けました!!・・・と、その時です!!・・・スッと、自分の腕が伸びた感じがしました・・・タップができたのです!!!・・・試合終了のゴングが鳴り響きました・・・6分28秒・・・私のギブアップ負けで終わりました。
最初から、勝てる相手ではありませんでしたから、悔しさは無く、ただただ、生きて終われたことに感謝でした。あの時・・・私の腕を伸ばし、タップさせてくださったのは、きっとイエス様で、イエス様が助けてくださったに違いない・・・今は、そう思っています。・・・しかし、当時の私は、やはりX神のおかげと信じてしまったのです。X神によって大変な目に遭ったというのに・・・@_@;)
あの時、タップができなかったら・・・本当に死んでいたかもしれません。実は、この少し前・・・ある格闘技の試合で、同じ事務所の芸人仲間を、1人亡くしていたのです。男性コンビの1人で、仕事に行き詰まり始めたとき・・・起死回生の話題作りで挑戦した結果・・・頭を強打し、帰らぬ人となりました。
・・・ですから、他人事ではなかったのです。試合後、私はすぐに病院に行かされ、CTスキャンなどの脳検査をされました。結果、異常はありませんでしたが、その時の検査技師が、奇しくも、その亡くなった彼の恋人でした。「どうか、お体・・・大切になさってくださいね」と言われ・・・生きている有り難さを身にしみて痛感しました。
そして、もっと自分を労わり、大切にしよう・・・と思った矢先!!・・・またもや、とんでもない企画が舞い込んで来たのです!!(つづく)
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