日本宣教を後押しすることを目標に、さまざまな事業を提案してきたが、キリスト教葬儀に正しく関わることが、日本宣教の重要なカギになると考えるようになった。現状の解析とともに、キリスト教葬儀への関わり方について提案したい。
キリスト教葬儀を選びにくい現実があった
通常、日本の家庭には仏教や神道など、先祖から伝わる宗教がある。そもそもそれらは信仰というよりは、受け継がれてきた文化のようなものなので、突然、家族の一員がキリスト教徒になったとしても、葬儀においてキリスト教式を選ぶのはとても難しい側面があった。
人は死んだ後、供養されることによって成仏し、先祖たちに迎えられるとする宗教文化があり、その道を指し示す仏教式の葬儀や葬儀後の法要から逸脱することは難しいと考えるのが一般的だった。
死生観の変化は新しい時代を生む
ところが、高齢化が進み寿命が延びることにより、高齢者が弱さを抱えて生きていく時間が長くなった。それに伴い、今まで避けていた「死」を直視するようになった。「生」と「死」を切り離し、供養を中心とした仏教的な葬儀文化の中でしか「死」を捉えていなかった時代から、「死」を見つめながら、どう生きるかが問われる時代になってきた。
健康に長生きし、輝いた「死」を迎え、希望を持って天国に凱旋することが、信仰を持っていない人にとっても理想の人生になってきている。「天国」を明確に意識できない日本人ではあるが、「死」を通過点と考え、生きることの大切さに目が向けられるようになれば、日本人の霊的覚醒が飛躍的に進む可能性がある。
結婚式がキリスト教式になったように葬儀も変化する可能性がある
伝統の中にある日本の通過儀礼の中で、結婚式だけはこの数十年でまったく変わってしまった。従来までの神道式は20パーセント以下になり、キリスト教式は60パーセント程度と圧倒的な人気を維持している。
要因は、キリスト教信仰が普及したのではなく、当人同士の約束を重視するキリスト教式の良さが、チャペル式結婚式の華やかなイメージと重なり、一般に受け入れられたことによる。個人の意思を尊重する現代社会では、葬儀においても、慰めに満ちた明るいキリスト教葬儀が広く受け入れられる可能性は高い。
現実に葬儀をキリスト教式に変えられるのか?
死生観が徐々に変化し、キリスト教式の結婚式を挙げた世代が葬儀に関わるようになった昨今、故人や喪主がキリスト教葬儀を希望することが多くなったように思う。未信者でありながら、自らの死を目前にして、ご自分の葬儀をキリスト教葬儀にしてほしいと願う方がおられる。
そのような時、ご家族は伝統的な家の宗教文化がありながら、故人の願いを叶(かな)えようとされる。本来は地域の教会が窓口になればいいのだが、敷居の高い教会に相談する方は少なく、地元の葬儀社に相談されることが多い。
キリスト教葬儀を断念するケースが多い
教会牧師につてがない場合、地域の葬儀社に牧師の手配をお願いするのが通常である。キリスト教葬儀社なら牧師手配もそれほど難しいわけではないが、慣れない一般の葬儀社の場合、遺族との打ち合わせの中で、無宗教葬儀(自由葬、音楽葬)などが提案され、キリスト教葬儀を断念することが多くなる。
それでもご家族が強く希望された場合、葬儀社が近隣の教会牧師にお願いすることになるが、未信者の葬儀となると教会牧師も断るケースが多く、最後に当社に連絡が入ることになる。当社に届く依頼は、多くの潜在的ニーズの一角にすぎない。今後、地域の葬儀社を介さずに依頼を受け、さまざまな家庭の事情に柔軟に応えられるようになりたいと考えている。
葬儀を伝道集会のようにしてはならない
未信者家庭に向けたキリスト教葬儀の場合、葬儀式について依頼者からの要望は少なく、牧師が短時間にすべてを取り仕切ることが多い。そのため基準となるプログラムや式次第、奏楽者や音源の手配を当社からサポートするようにしている。
キリスト教葬儀は、故人の人生を導いた神様への礼拝であるが、故人を偲び、ご遺族を慰め、遺体を丁寧に葬ることを疎(おろそ)かにしないよう配慮が必要である。葬儀の場は教会の伝道集会のようにしてはならない。福音を語るチャンスは、葬儀前後の遺族への訪問、納骨式、毎年繰り返される記念会の場を利用しながら、何度でも訪れるに違いない。葬儀は宣教の入り口にすぎない。
未信者家庭に天国の希望はあるか?
信仰を持っていない日本人であっても、最近はよく「天国」という言葉を使う。残された遺族にとっても、死後の世界で故人が生きていて、いずれ再会できるという希望があれば、それは大きな慰めになる。
しかし、未信者に天国の希望があるとは聖書は語っていない。むしろ死後の裁きが示されているのである。司式をする牧師にとって、このあたりの整理がないと未信者の葬儀への対応が難しい。未信者家庭に対する整えられた葬儀内容、葬儀メッセージの準備が必要である。(つづく)
◇