パキスタンで先月末、若いキリスト教徒の男性が路上で銃殺される事件があった。男性は地元の有力者であるイスラム教徒から、男性の休日である日曜日に仕事をするよう求められたが、それを拒否していたという。
北東部パンジャブ州シェイクプラ在住のノーマン・ムニール・マシーさん(20)は、地元の衛生局の仕事をしていたが、モーニングスター・ニュース(英語)によると、3月20日に仕事で義理の兄弟やおじと共に移動していたところ、路上で2人の男に襲われ殺害された。
「2人(義理の兄弟とおじ)がノーマンを車から降ろして立ち去ろうとしたとき、突然オートバイに乗った2人の男がそこにやって来ました」と、ノーマンさんの母親であるカリダ・ビビさんは言う。「2人のうち1人が拳銃を抜いてノーマンを撃ち、その場で殺しました」。カリダさんはそう言い、家族を失い衝撃を受けていると語った。
2年前に父親を亡くしたノーマンさんは、ペンテコステ派のキリスト教徒。父亡き後は一家の大黒柱として、母親と3人の弟、2人の妹を養うため、仕事をしていた。事件に関与したとして、地元のイスラム教徒の男、ダーヌ・チャードル容疑者が逮捕された。
ノーマンさん一家の弁護士を務めるカシーフ・ナイメット氏によると、ノーマンさんは休日である日曜日に、チャードル容疑者から屋外トイレを掃除するよう命じられ、それを拒否したところ、チャードル容疑者から脅されていたという。
「チャードル容疑者は、クリスチャン(であるノーマンさん)が要求に応じないことであからさまに腹を立てました。取るに足りない清掃員から断れたことを受け入れられないチャードル容疑者は、『ひどい目』に遇う覚悟をしておけ、とノーマンさんに告げ、命令を拒んだ代償として『両足を切断して体に風穴を開けてやる』と脅していたとされています」
またナイメット氏は、「ノーマンさんは質素な清掃員で、誰にも敵意を持っていませんでした。イスラム教徒のデラ(屋外トイレ)を掃除することを拒否したことが、殺害につながったことは明らかです」と続けた。
権利擁護団体によると、パキスタンのキリスト教徒はほとんどが権力や地位を持たない少数派であるため、多数派である多くのイスラム教徒から虐待を受けているという。清掃員の多くは比較的低い立場にあり、主にキリスト教徒で構成されており、特に低い地位にあることを自ら認識しているという。
シェイクプラ群政府清掃員労働組合のリヤーズ・マシー・バッティ会長は、次のように述べた。「キリスト教徒の清掃員に対する偏見がしばしば見受けられますが、白昼に物騒な攻撃を受けたノーマンさんの殺人事件は、コミュニティー全体に衝撃と動揺の影を落としています」
キリスト教権利活動家のナポレアン・カイユム氏は、「多くのイスラム教徒は、『低俗な』キリスト教徒による拒絶を受け入れるのが難しいと感じています。キリスト教徒の清掃員が、多数派のイスラム教徒による不当な要求に従うことを拒否して殺されたり、暴力を振るわれたりしたのはこれが初めてではありません」と言う。
「この国が、信仰やカースト、信条とは無関係に全ての国民に対して責任を持つようになるまで、キリスト教徒の道路清掃員やゴミ収集作業員の状況が好転することはありません」とカイユム氏は述べた。