国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)は4月に「樅(もみのき)寮」と「楓(かえで)寮」という2棟の学生寮をオープンする。それに先立ち、3日、同寮で記者会見発表が開かれ、その特徴や意義、具体的な活用法について説明があった。
ICUにとっては13、14番目の寮で、62万平方メートル(東京ドーム13個分)という広大なキャンパス内に建つ。定員は樅寮(7階建て)が192人、楓寮(5階建て)が128人。全ての寮を合わせて、全学生数の30%超、約900人の学生がキャンパス内に住むことになる。ICUでは同寮を、単なる居住施設ではなく、他者との交流を通じて人間的な成長を促す場と位置付ける。また、環境配慮型の学生寮でもある。
日比谷潤子学長は次のように述べた。
「新学生寮は、ICUの教育理念をさらに進化させたもの。62年にわたる寮の歴史の中で、5千人の日本人や外国人が住み、共同生活を送ってきた。多様な人によるダイバーシティーの先駆けとも言える。寮は、背景・立場を超えた人たちが集まり、共同生活の中での対話を通じて人格的な成長を遂げる、なくてはならない教育施設の1つだ」
同寮は大学側が一方的に提供するものではないことが大きな特徴。学生部長の布柴達男教授によると、既存の寮に暮らす学生や卒業生が参加して新寮の青写真を描き、レイアウトについても寮生の意見が取り入れられたという。その中でも、寮生が大切にしていたのは「対話」。まさに、対話を重んじるICUの教育理念が自然とその計画に反映されていたのだ。
寮のルールも、寮生間の十分な議論をもとに大学と協議をして決定するという、寮生主体の運営がなされている。そのために最適な各フロアの人数は32人であると寮生と寮経験者が示したところ、その人数は過去のICUの寮の定員と合致していたという。
また、1階が共有フロアになっており、通学生や教職員、時には卒業生をそこに招いてセミナーやワークショップを開催することも計画されている。
この日は、今後期待される新しい取り組みの1つとして、防災、地域貢献に関しての可能性が紹介された。布柴教授はこう語る。
「ICUが寮生900人の命を預かっていることの責任の重さを感じている。一方、これだけの若い力が、キャンパスの外(地域)で起きているいろいろなことの役に立つのではないか」
ICUが三鷹市の広域避難場所に指定されていることから、もし災害が起きた場合、寮生たちは何ができるのかというテーマのもと、新学生寮に入る学生18人が6人ずつのグループに分かれ、実際にプレーンストーミングを行った。
まず、ICUの卒業生で、現在はUNICEF東京事務所に勤める佐々木佑さんが、東日本大震災での体験談を話した。当時、子ども支援専門の国際NGOセーブ・ザ・チルドレンで活動していた佐々木さんが、避難先でどういう問題が起きていたのかを話すと、学生たちはそれをヒントに次々とアイデアを出して意見をまとめ、その結果を報告した。
布柴教授は、「現実に学生寮と地域防災を結び付けることには時間がかかるが、寮生たちが対話を通して、今後も防災と地域貢献について考えてほしい」と話す。ICUでは防災の他にも、寮生たちの対話によってさまざまなプロジェクトが生まれることを期待している。