米国のメガチャーチの牧師夫人とキリスト教倫理学者が最近、米国人への養子縁組を禁止しているロシアについて触れ、ロシアの孤児たちのために祈るよう呼び掛けた。
米カリフォルニア州にあるメガチャーチ、サドルバック教会のリック・ウォレン牧師の妻であるケイ・ウォレン氏は5日、自身のツイッターに「エイズに感染し、施設内で生きるしかない乳幼児たちを収容しているロシアの幾つかの孤児院を訪れたことがあります。養子縁組禁止令が撤廃されるように祈っています」と投稿した。ウォレン氏はこれまでも、精神衛生や子どもの権利の問題に関して、はっきりとした意見を示している。
ウォレン氏のツイートは、米南部バプテスト連盟(SBC)の倫理宗教自由委員会委員長であるラッセル・ムーア氏のツイートを受けてのもの。ムーア氏は同日、自身のツイッターに「ウラジミール・プーチン露大統領についての議論――暴力、宗教的迫害、犯罪行為――と共に、彼の政権が虐げている孤児たちのことを思い起こしてください」などとコメントし、ロシアの状況を危惧するツイートを連続で投稿していた。
ロシア議会は2012年12月、米議会が同月にロシアの人権問題に制裁を加える新法案を承認したことへの対抗措置として、米国人への養子縁組を禁止する法律を成立させた。
一方、ロシアでは旧ソ連時代、孤児たちは全員、政府の施設で育てられたこともあり、国内で養子縁組が行われることはまれだという。ムーア氏は「養子縁組の禁止により、子どもたちは孤児院に閉じ込められています。そして旧ソ連の国には孤児たちを養子に迎えるという文化がほとんどないのです」と述べ、「こうした制度の中で育った子どもたちは、ほとんどの場合、絶望の人生や薬物に依存した人生を送るか、自殺するのです」と続けた。
昨年7月、プーチン氏は、政府認可の礼拝所以外で自分の信仰を伝えることを禁止する法案に署名した。ロシア政府は反テロ政策の一環だと主張しているが、同国内の福音派指導者たちは、キリスト教の伝道を実質的に禁じるものだと警鐘を鳴らしている。
大宣教命令メディアミニストリーズのハンヌ・ハウッカ会長は昨年7月、全米宗教放送協会(NRB)とのインタビューの中で、「この新しい状況は1929年のソ連に似ています。当時は信仰の表明は教会の中だけで許されていました。事実上、私たちは昔と同じ状況に戻ってしまったのです。この反テロ関連法案は旧ソ連時代の最も厳しい規制法に匹敵するものです」と危機感をあらわにしていた。
孤児たちに仕えようとしているロシアの福音派教会が「その信念の故に、(ロシアの)政府と文化によって疲弊しています」とムーア氏は言う。
ムーア氏自身は、ロシア生まれの孤児2人を養子にしており、ロシアの養子縁組禁止令が「深い個人的な痛み」となったことを明かした。
「私は毎日、こうした孤児院に置き去りにされている子どもたちのことを、まさに自分の息子たちのように考えます。(シリア内戦の激戦地であった)アレッポで吹き飛ばされた子どもたちのことも」
「今、その2人の元孤児たちは、私たちの教会で案内係の奉仕や献金当番をしています。彼らの仲間の多くは恐怖の中で暮らしています。主よ、彼らを憐(あわ)れんでください」
ムーア氏はこれまでもプーチン政権を強く批判しており、養子縁組に関する懸念も踏まえ、何度もロシアが自らを「伝統的価値観の擁護者」のように描写することを酷評している。
2014年には、「私は過去2、3年の間に何度も、プーチン氏と彼の政権が米国と世界の他の国々に、家庭の大切さについて説教しようとすると聞きました。私は全くそれを信じていません」とコメント。「私は、中絶率が甚だ高い国、孤児院が子どもたちで満ちていながら、他の国々の人々が養子に迎えることを許さない、そういう国を信じません」と述べていた。
また、「ロシア政府はロシア人たちが養子を迎えるように励ますために何もしていません。そのため、孤児院に閉じ込められている子どもたちは、やがてそこから出て自分の力で暮らしてゆかねばならない頃になると、多くの場合、売春や薬物乱用、自殺に走るのです。これが家庭を大切にする価値観だと言わないでほしい」と批判していた。