ロシア正教会のモスクワ総主教キリルは27日、中絶を違法とすることを求める請願書に署名した。ロシア正教会はこれまで、医学的に中絶する必要のないケースのみについて禁止を呼び掛けてきたが、その立場を硬化させた格好だ。
ロシア正教会は声明で、総主教が中絶反対の活動家らと会談し、ウラジミール・プーチン大統領に提出する請願書に署名したと述べた。
ロシア正教会の委員会は、家庭問題や母親と子どもの保護について検討し、請願書の文言を「出生前の子どもの法的殺人の終結」とすることで合意した。
請願書には、外科手術や薬剤誘発による中絶だけでなく、経口避妊薬も禁止する「法的改正を要求する」と記されている。
ロシア正教会は、信徒ボランティアを含む活動家らに対し、総主教が感謝と祝福の言葉を述べたと、27日の会議で報告した。
AFP通信によると、総主教は5月、中絶は「事実上、国家的な大災害で、毎年、100万人余りのロシア国民の命を奪い去っている」と述べていた。
活動家の1人で、「フォー・ライフ」という団体の代表を務めるセルゲイ・チェスコフ氏によると、これまでに30万人分余りの署名が集まった。活動家らは100万人分の署名を目標にしており、請願書を大統領府に提出する計画を立てているという。
ロシアでは、ロシア正教会と国家は厳密には分離されており、入手可能な最新の政府統計によると、2014年には国立病院で100万件余りの中絶が合法的に行われた。 ただしこの数字には、個人経営の診療所で行われた中絶の数は含まれていない。
ロシア連邦議会国家院(下院)の保守派議員、エレーナ・ミズリナ氏は昨年、民間の診療所による中絶を禁止する法案を提出した。妊娠が女性の生命を危険にさらす場合のみ、国家の医療サービスにより中絶が許可されることを可能にする内容だ。
しかし、連邦院(上院)のワレンチナ・マトビエンコ議長は、同法案を「過激主義的だ」とし、議会は法案の支持を拒否した。
総主教は昨年1月、宗教指導者として初めて連邦議会で発言し、「中絶数を50パーセント削減できれば、ロシアは強力かつ安定した人口増加を維持できる」と国家院で語っていた。