世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(東京都杉並区)は9日、難民支援協会(同新宿区)と共同で、トルコにいるシリア難民を留学生として受け入れる「プライベート・スポンサーシップ」を開始すると発表した。民間主導による難民受け入れ制度は、日本初の試みとなる。
2011年に内戦が勃発したシリアは現在、人口の半数となる約1200万人が国内外に避難を強いられ、そのうち280万人以上がトルコに難民として逃れている。その中で、高等教育の機会が限定的、もしくは中断せざるを得なかった若者は55万人に上るという。こういった現状を受け、カナダが世界で初めてつくった民間難民受け入れの仕組み「プライベート・スポンサーシップ」を取り入れ、今回の共同事業の実施に踏み切った。
すでに、首都圏と関西圏にある2校の日本語学校と協力企業・団体の支援を得て、募集・選考を進め、現在は6人(男女各3人 / 10代2人、20代4人)のシリア難民留学生に対してビザの発給手続きが進められている。
難民支援協会によると、今回の募集では、居住地を問わず212人のシリア人からの応募があった。その中で日本語既修者は16人で、日本語で面接を受けるほど上達している応募者もいたという。応募者の中には、大学進学を諦めた人、教育を中断せざるを得なかった人が多く、高等教育に対して強い関心を示しているという。
また、「プライベート・スポンサーシップ」を通じて、多様な形での難民受け入れの可能性があることを社会全体に示し、難民の積極的な受け入れを日本政府だけでなく社会全体に呼び掛けていく。将来的には、より多くの市民が難民の受け入れに関われる仕組みにしていきたい考えだ。
18日から23日にかけて、カナダで民間主導による難民受け入れを行うカトリック・トロント難民事務局のマルティン・マルク所長が来日する。21日には、WCRP日本委員会難民問題タスクフォース学習会での講演を予定している。学習会では、世界で最初に民間による難民受け入れ制度をつくり、現在も世界をリードするカナダの制度について学ぶ。
難民支援協会は1999年に設立したNPO団体。難民が新たな土地で安心して暮らせるよう支援すると同時に、制度改善のための政策提言・調査研究なども行っており、これまでの活動に対して、国際交流基金地球賞(2013年)、沖縄平和賞(16年)など数多くの賞を受賞している。国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所のパートナー団体でもある。