6月20日の「世界難民の日」に合わせ、日本福音ルーテル社団(JELA)の1階ホール(東京都渋谷区)で22日、「なんみんフォーラム オープンデー2016」が開催された。主催は、日本に逃れた難民を支援する団体のネットワークで、JELAも加盟している、NPO法人なんみんフォーラム(FRJ)。
難民支援団体のブースが多数展開され、各団体の活動紹介、難民問題についての自由な情報交換の時間が持たれた。会場は身動きをとるのが難しいほどに多くの来場者が訪れ、日本で生活する難民が調理した食事を楽しみながら、活発に語り合う姿が見られた。
世界では、6千万人以上の人々が、紛争や迫害を逃れて避難を余儀なくされている。昨年には、100万人を越える難民が欧州に渡って大きな注目を集めたが、難民は遠いどこかの地にいるのではなく、日本にも渡ってきている。
一国だけでは解決のできない難民問題を、国際社会の一員として、日本、そして日本人一人ひとりに何ができるかー。難民問題に関心のある人々、難民支援に携わるさまざまな人々、当事者である難民が、共に考える交流の場にしようと、今回初めて「なんみんフォーラム オープンデー」が開催された。
ブースを展開し、支援活動の様子を紹介したのは、JELA、FRJをはじめ、日本国際社会事業団(ISSJ)、難民支援協会(JAR)、全国難民弁護団連絡会議(JLNR)、アムネスティ・インターナショナル日本、社会福祉法人さぽうと21、難民・移住者労働問題キリスト教連絡会、難民自立支援ネットワーク(REN)、名古屋難民支援室(DAN)。
会場では、ミャンマーでごはんにふりかけて食べられるという「お茶の葉サラダ」やひよこ豆で作った豆腐を揚げた「トーフジョー」、中東出身の難民が手作りした「モロヘイヤスープ」や「アラビックサラダ」などが振る舞われ、来場者は難民の故郷の味を楽しみながら、各ブースを回った。
難民支援といっても、法的支援から生活支援、エンパワメントやアドボカシーなど、市民による活動は多岐にわたる。世界最大の国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルは、死刑制度の廃止の呼び掛けなど、人間らしく生きる喜びを奪われたあらゆる人々のために世界中で活動しており、日本での難民問題については、日本政府に対して日本での難民受け入れ制度の改善を訴える活動をしている。
この日のブースでは、非正規移住者の親のもとに生まれたために、出生登録が受け付けられず、無国籍状態にあるドミニカの子どもたちに宛てた励ましのメッセージを、来場者と共に作成していた。
日本在住難民の自立支援として、難民と共にビーズ・アクセサリーを製作・販売、その収益を日本とアフリカの難民支援金としているRENのブースでは、キーホルダー、ネックレス、指輪など、さまざまな種類のビーズ・アクセサリーが並べられていた。RENのメンバーである、アフリカのブルンジから日本に逃れてきた難民男性の明るい客引きが好評で、誘われるようにしてやって来た女性客でにぎわいを見せていた。
毎週土曜日に学習支援室を開いて難民として日本に定住する家族の自立支援を行っている、さぽうと21のブースでは、講師ボランティア募集の呼び掛けがなされ、興味のある来場者が説明を受けていた。
また、筑波大学で難民支援に取り組んでいる学生団体CLOVERのメンバーがブースを訪ね、「日本語学習のサポートなど、学習支援をしているが、なかなかうまくいかないところがある。活動を参考にさせてほしい」と、積極的に情報交換している様子も見られた。
「どうして祖国にいられなくなったのですか」「自分の国に帰りたいと思いますか」「日本での暮らしはどうですか」と、日頃なかなか会う機会のない難民に直接心境を尋ねている来場者も多く、まだ慣れない日本語に時折英語を交えながら、静かに思いを話す難民の言葉に耳を傾けていた。
来場者のひとり、高校3年生の女子は、「学校では、ボランティア部に所属しているので、その活動の中で難民問題にも関心を持つようになった」そうで、これまでも難民問題に関するイベントに足を運んできたと話してくれた。この日も、多数の支援団体のスタッフから話を聞き、ますます「日本ももっと難民を受け入れるべき」という思いを強くしたという。
大学受験を控える時期だが、こうしたイベントに参加することを通して刺激を受け、「法学部に進学して、法律家として難民支援に取り組みたい」と、将来の目標を聞かせてくれた。
RENで活動する難民男性は、「難民を支援してくれている人たち、関心を持ってくれている人がこんなにも集まってくれてうれしい。当事者である難民の参加者が少ないので、もっとこういう場所に積極的に出てくると良いと思う」と、イベントの感想を話した。
ブース形式のイベントとしては初めての開催であったため、どれほどの来場者になるのか予想がつかなかったそうだが、思わぬ盛況ぶりに、難民保護に対する人々の関心の高さがうかがえた。