緊急時に身寄りなく安定した居場所を持たない人たちの一時保護を目的とした「IMA(いま)緊急シェルター」がクリスマス・年末に向けて、寄付による支援を呼び掛けている。行政の窓口が閉まってしまうこの時期、宿泊施設を必要とする人が安心して泊まれる場所の確保は差し迫った課題であると同時に、さまざまな事情で泊まる場所がない人たちに「宿を提供する」シェルターは必要不可欠だ。
IMA緊急シェルターのスタッフで東京都千代田区のカトリック麹町教会(聖イグナチオ教会)信徒の岩田鐵夫さんは、聖書の御言葉「初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」(ルカによる福音書2:7)を引用し、「『彼ら』は、遠い昔の話ではなく、私たちの住む日本でも、泊まる場所がなく苦しんでいる人が大勢います」と話す。そして、行き場のない人たちが安らげる「馬小屋」が必要だと訴える。
同シェルターが設立されたのは2001年12月。岡田武夫大司教が、カトリック新聞に「野宿生活者の緊急一時避難場所―対応遅れによる死を防ぐため―」という記事で寄付を呼び掛けたことがきっかけだった。その時の財源によって、IMA緊急シェルターという小さな支援団体が設立された。
その後、聖イグナチオ教会で「2009年緊急アピール小委員会」が立ち上がり、ドメニコ・ヴィタリ主任司祭の指導のもと、生活困窮者の相談機関として聖イグナチオ生活相談室が開設された。当初はその支援の中で、同シェルターへの手配をとってきたが、そのうち、運営を引き受けるようになったのだという。
IMA(いま)には、高い緊急性を示す「今」、みんなが集まる場所「居間」、その英語であるliving room(生きる場所)などといった意味が込められ、これまでホームレス、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者、外国人労働者、難民など、居場所を失った人たちの緊急シェルターとして、いわば「馬小屋」の役割を果たしてきた。
同シェルターに避難してきた人たちは、その中で雨風をしのぎ、食料を得られると同時に、そこに泊まることで心が落ち着き、自分の将来をあらためて考え始めるケースが多いのだという。同シェルターは、「希望」が生まれる場所でもあると岩田さんは話す。
生活保護を受けながら簡易宿泊施設、いわゆるドヤで暮らし、そこでの暮らしが大きなストレスとなり、別の住居に移るまで同シェルターを利用したという人は、「シェルターはとてもきれいで広く、設備も必要なものが備わっていてとても助かった。そのおかげで入居初日から落ち着いて休むことができ、新しい引っ越し先を腰を据えて探すことができた」と感想を語っている。
岩田さんは、「シェルターは、単に避難の場だけではなく、人の生きる力を支えるということもあるのです」と、行政の狭間で一番困っているときこそ、安心して泊まれるシェルターが必要であることを強調した。また、現在では難民の利用者が多くなっていることを明かした。
「今は難民のホームレスが増えています。難民申請中の人に対する政府からの保護が十分でないため、ホームレスとなっていく人が後をたたないんですね」と、日本における難民の実態を語った。
NPO法人難民支援協会でも、同協会が持つシェルターを提供しているが限界があり、IMA緊急シェルターは、ホームレス難民たちにとって大変重要な存在になっていると話す。
実際に利用したホームレスの難民の1人は、「日本に逃げて来た一番の理由は、保護を求めてです。路上ではありましたが、ここは安全だと思い必死に生活していました。それがある時、IMA緊急シェルターに入ることができ、家の中でご飯を食べ、布団の上で寝ることができ、本当に幸せな生活でした」と当時を振り返った。
岩田さんは、「宿のない人に宿を提供すること」が、キリスト者の仕事であることをヴィタリ司祭から教わった。そして、「社会の問題を全部解決することはできないが、困っている人を迎え、助けることはできる。シェルターを促進させ、宿のない人たちを支えることは今後も大事な仕事だ」というヴィタリ司祭の言葉を励みとし、IMA緊急シェルターの運営を、今後も縮小させることなく続けていきたいと力を込めた。
IMA緊急シェルターへの問い合わせは、(電話:090・9842・7181、メール:[email protected])まで。*住所はシェルターとしての性質上、非公開となっている。
寄付の送り先は、郵便振替口座:0140-2-576186 IMA緊急シェルター。
また、イグナチオ教会では、「四ツ谷おにぎり仲間」という奉仕グループが、毎週土曜日の夕方6時から、銀座や日比谷公園、東京駅周辺を2時間かけて路上生活者を訪問している。その中で、シェルターへの入居が必要な人を見かけた場合には、声を掛けるなどしてIMA緊急シェルターと連携をとっている。今年最後の訪問は大晦日の31日。誰でも参加できる。詳しくは、ブログで。