ローマ教皇フランシスコは、シリアのローマ教皇大使であるマリオ・ゼナリ枢機卿を通じて同国のバッシャール・アル=アサド大統領に書簡を送り、同国の暴力をやめて敵対関係を平和的に解決するよう訴えた。バチカン放送局英語版が12日報じた。
バチカンの報道局から12日に発表された公式声明は、「枢機卿団のマリオ・ゼナリ大司教の名前を挙げるに当たって、教皇は、近年痛ましいほどに試練を受けている、愛するシリア国民のために、格別の愛着のしるしを示そうとされました」と述べている。
「この新しい枢機卿を通じて送られた書簡の中で、教皇フランシスコは、暴力をやめて敵対関係を平和的に解決するよう求め、どの地区から来ているのかにかかわらず、あらゆる形の過激主義やテロリズムを非難し、文民の保護と人道援助を受ける権利に関して国際人道法を必ず完全に尊重するようバッシャール・アル=アサド大統領に訴えようと、同大統領と国際社会に対するご自身の訴えをあらためて表明されました」と、この公式声明には記されている。
しかし、英国クリスチャントゥデイは13日、教皇のこの訴えを報じた記事の中で、反体制派の拠点だったアレッポでは約8万人の文民がそこに閉じ込められて死に直面しており、ますます絶望的な状況の中で、ツイッターなどで世界に向けて助けを求めていることを伝えた。
英国クリスチャントゥデイはその記事で、人道支援の活動家たちもアレッポのがれきや破壊の中に閉じ込められており、「アレッポがさらに人道危機へと向かう一方で、アサド(大統領)が教皇フランシスコや他の誰からの訴えにも耳を傾ける兆しはない」と報じていた。また、「アサドの軍隊がアレッポを侵略し、文民数十人が『即座に』射殺される」という見出しの記事も掲載していた。
その後、14日になって、反体制派がアレッポから撤退することに同意し、シリア政府軍がアレッポを制圧したと複数のメディアが報じた。
同日、クリスチャンポストは、「アレッポは『地獄の穴』 子どもたちが生きたまま焼かれ、女性たちがレイプされるのを防ぐために自殺」という見出しの記事を掲載。反体制派がアレッポからの撤退に合意した後、アサド大統領の政府軍がアレッポを奪還し、人権侵害についての幾つかの衝撃的な体験談が国連によって報告され、調査されていると報じた。
ニューヨークの国連ニュースセンターによると、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は13日、国連安全保障理事会の緊急会合で、アレッポにおける大虐殺をやめさせるよう呼び掛けていた。14日、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官は、シリア政府が自国民の安全確保に「明らかに失敗した」と述べ、文民の居住区域に対する、シリア政府軍とその同盟勢力による極めて激しい爆撃の再開は、「ほぼ確実に国際法違反であり、戦争犯罪である可能性が高い」と語った。