アレッポのイエズス会司祭が、カトリック教会によるアレッポ残留市民への支援について語った。シリア北部の都市アレッポでは、ここ数週間の内に戦闘が激化し、多くの死者と数千人の避難民が出ている。水道や電力が遮断され、市民約200万人に影響が出ている。
反体制派がアレッポ掌握を目指し政府軍との攻防が続く中、ジアド・ヒラル司祭は、カトリックの慈善団体「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード(困窮している教会への支援)」(ACN)に、「昨夜はよく眠れませんでした。一晩中、両陣営の間で砲撃や銃撃戦が続いたからです」と語った。
しかし、ヒラル氏によると、現地のカトリック教会は、アレッポにあるマリアの宣教者フランシスコ修道会の施設で、空腹な人たちに食べ物を配給しているという。配給を受けているのは多くがイスラム教徒。ヒラル氏は、「施設には大きな厨房があります。その厨房はACNやその他の団体が資金提供したもので、施設にやって来る約7500人の人たちに毎日食事を提供しています」「食事は膨大な量で、働いているのはイスラム教徒とキリスト教徒のチームです。この食事によって養われている人の多くは、イスラム教徒です」と言う。
アレッポは依然として包囲状態にあるものの、カトリック教会では結婚式や洗礼式、毎日のミサが行われており、ヒラル氏は「希望」があると言う。「一面では明るい状況とは言えません。悲しい状況です。しかしもう一面としては、現地のカトリック教会が活動しており、キリスト教団体を中心として、人々が救済活動をしています。その人たちは希望のしるしです。現地において、私たちの使命は重要です」
「深夜から朝にかけては街中が真っ暗で、人々の活動は全くありません」。電力供給は極めて限定的で、発電機を使っても、供給できるのは1日2時間以下だという。「電力がないので、熱源がありません。また多くの人は、仕事に行くことができません。街が2つの区域に分断されているからです。反体制側と政府側です。民衆はこの2つ区域間を行き来できません」「両区間を行き来できないため、仕事に行くことができない人が大勢います。そういう人たちは失業したり、住む所を失ったりした」
ヒラル氏は、2万7千〜3万人のキリスト教徒がアレッポを出たとみている。この数字は、戦闘が始まる前にアレッポにいたキリスト教徒の約6割に相当する。残留している人たちは貧しく、仕事に就ける見込みもない。
「私は、あるカトリック教徒の一家に出会いました。一家の子どもたち3人は、レストランで働いています。1人は7歳か8歳、もう1人は10歳、3人目は14歳です」「その子たちの父親は死にました。どのような事情で亡くなったかは分かりません。母親も(レストランで)働いています。レストランのオーナーが、私にこう言いました。『この働いている子たちを見てください。私はこの子たちを断れませんでした。今は夏休みなので、母親の手伝いをしているのです。胸が詰まる思いでした』と」
ヒラル氏はまた、こう付け加えた。「シリアの人々、特にアレッポの人々に必要なのは、生活を続けるための安全と支援です。状況が困難だからです。(中略)数日前、教皇フランシスコが重要なことを語られました。『若者もお年寄りも、情熱を持ってこの「いつくしみの特別聖年」を生活し、無関心に打ち勝ってくださるようお願いします。まず初めに、シリアの平和は実現可能であると宣言してください。シリアの平和は実現可能です』と。シリアの平和が実現可能だという宣言は、私たちの心の叫びです。それが私たちにとっての唯一の希望です」