シリア人活動家らが、ポケモンのイラストを掲げて助けを求める子どもたちの写真をソーシャルメディアに投稿している。5年余り続く紛争に、世界の目を引きつけるためだ。
英オンライン新聞「インディペンデント」によると、フェイスブックに投稿された一連の写真には、ポケモンのイラストを掲げる子どもたちが写っており、「僕を助けに来て」というキャプションが付けられている。
ある投稿写真には、「僕は、イドリブ県のカフルナブルという町に住んでいます。助けに来てください」と書かれている。数万人の人々が、フェイスブック上でこれらの写真をシェアしている。
世界的に大流行しているスマートフォンアプリ「ポケモンGO(ゴー)」に乗じたこうした広報活動の背景には、シリア革命軍(RFS)メディアオフィスの働きがある。RFS
メディアオフィスは、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領に対抗する反体制派の広報役を果たしている。
「私たちは、政府軍に包囲された地域にいるシリアの子どもたちの苦境や、政府軍やロシア軍の攻撃を日ごとに受けて殺されている人々の苦しみを、世界に伝えたいのです」「シリアの子どもたちは戦争の犠牲者です。政府軍やロシア軍のジェット戦闘機により、日常的に行われる残忍な無差別攻撃の犠牲になっています。アサドの殺りく兵器を食い止める国際紛争のつけを、子どもたちが払わされているのです」と、トルコに拠点を置くRFS
メディアオフィスの広報担当者は言う。
シリアの紛争をめぐっては、国連児童基金(ユニセフ)がイニシアチブを取り、シリアの子どもたちへの暴力を止めるよう要求している。「学校への攻撃が任意で行われるようになり、生徒や教師の殺害、誘拐、逮捕が日常茶飯事になりました」と、ユニセフの担当者は語る。
最近あったシリア北西部の都市マンビジへの空爆では、子ども20人が死亡した。またある動画には、シリア最大の都市アレッポで12歳の少年が死亡した光景が映っていた。
ユニセフの推計では、マンビジ周辺に封じ込められている子どもたちは、3万5千人に上る。ユニセフによれば、国内には約450万人のシリア人が、食糧や医薬品の供給が断たれた状態で封じ込められている。
英BBCは、シリア国外にいるシリア人アーティストの中には、内戦下で苦しむ国民の状況をポケモンを使って広めている人たちがいると紹介している。スウェーデンにいるムスタファ・ジャノさんは、ポケモンが難民と共に戦火を逃れ、命懸けで欧州に船出するというストーリーの投稿をフェイスブックに連載している。
ジャノさんはある投稿の中で、スウェーデン人小説家ヨナス・ガーデルの言葉を用いて、次のような投稿をした。「おじいちゃん、2016年の夏はどうしてたの? 世界が戦争に巻き込まれていたんでしょ」「ああ、愛する孫たち、おじいちゃんたちはなぁ、携帯でポケモンたちを探していたのじゃ」
デンマークにいるシリア人グラフィックデザイナーのサイフ・ターハンさんは、ポケモンGOの特徴的なインターフェースからヒントを得て、仮想ゲーム「シリアGO」を考え出した。戦火に巻き込まれた市民のために、ポケモンではなく、安全や教育、医療品、その他の必需品を探すというゲームだ。