シリア北東部の都市カーミシュリーのアル・ウスタ地区にある聖ガブリエル教会で19日、自爆攻撃があった。同教会ではこの日、シリア正教会の最高指導者であるアンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世が参加し、正教の聖神降臨祭を祝うとともに、1915年のアルメニア人虐殺を記念する行事が行われていた。世界教会協議会(WCC)とアジアキリスト教協議会(CCA)は20日、この攻撃がアフレム2世を標的にしたものだとして、非難声明をそれぞれの公式サイトで発表した。
WCCによると、襲撃犯は同教会に入ることを妨げられたが自爆し、自らと警備隊員3人を殺し、5人を負傷させた。
WCCのオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事は、WCC常議員会が現在開かれているノルウェー中部の都市トロンハイムで、WCCに加盟する世界中の教会がこの事件に対して懸念を示していることを強調した。
「私たちは、この攻撃の知らせに衝撃を受けています。明らかに、シリア正教会の最高指導者をその故郷で標的にしたものです。それは、キリスト教社会に対するテロ行為であり、暴力行為でした。私は、この攻撃の背景にあるイデオロギーや意図を非難するとともに、ますます脅かされ攻撃されつつある、この地域にいる全ての宗教的少数者とその指導者たちのために祈りと支援を呼び掛けます」
トヴェイト氏は、「アフレム2世がこの攻撃で危害を受けなかったことで、私たちは神に感謝する一方、私たちは他の人たちを危害から守り、命を失った方々のご遺族のために、そして負傷した人たちの癒やしと回復のために、思いをはせて祈ります」と付け加えた。
この自爆攻撃が起きた状況を省みて、トヴェイト氏は、「シリアの紛争を終わらせるための国際的な連帯と一体的で集団的な行動、とりわけ暴力と抑圧の標的にされているこの地域全体の宗教的少数者たちの保護」をあらためて呼び掛けた。
CCAのマシューズ・ジョージ・チュナカラ総幹事は、自爆攻撃に関するCCAの懸念を表明しつつ、「CCAはこの不運な出来事に深く悲しんでおり、私たちはアジアと世界中の平和を愛する全ての人々や共同体の懸念を共有するとともに、中東地域の持続的な平和のために働いておられる総主教の祝福された人生と継続的な指導のために祈る」と述べた。
チュナカラ氏は、「シリアや中東の他の地域にいる少数派のキリスト教共同体に対する、テロリスト集団による現在進行中の暴力は、重大な問題である。過去6カ月間にシリアで、アッシリア人の少数者たちに対して5回も自爆攻撃が連続して起きたことは不運なことだ。いかなる宗教的、文化的な少数者に対するテロ攻撃も嘆かわしく、国際社会は中東で現在進行中のテロ攻撃をやめさせるために、集団的に行動すべきだ」と付け加えた。
また、「キリスト教が誕生し、根差した故郷の地で多数のキリスト教徒たちが、彼らの信仰や宗教的アイデンティティーのために生き残ることができず、既に先祖の故郷や土地を離れてしまったことは不幸なことだ」と語った。
アンティオキアおよび全東方のシリア正教会の会員たちは現在、アジア諸国に幅広く散らばっており、彼らの中にはインドやイラン、オーストラリア、ニュージーランドでCCAに加盟しているところもある。
WCCとCCAは、それぞれの加盟教会や加盟協議会に対し、シリアや中東の他の地域の平和のためにとりわけ祈るよう訴えている。