シリア全土から集まったクリスチャン戦闘員数百人が、聖書の時代から続くシリアの町がイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に制圧されることを防ぐため結束したと、シリア正教会の代表が述べた。
ISの戦闘員がシリアの首都ダマスカスに向けて進み続ける中、彼らは10月31日から、古代アッシリアの中心部を攻撃し始めた。ISはすでにマヒーンの町を制圧しているが、マヒーンから約4マイル(約6・4キロ)離れたサダドの町を守るためにキリスト教徒がシリア全土から集まっている。
民数記とエゼキエル書の中に「ツェダド」として登場するサダドは、ダマスカスとホムスの町を結ぶ高速道路沿いにあり、戦略上重要な町とみられている。
2013年、アルカイダ系のヌスラ戦線がこの町を制圧した。その1週間後にシリア軍が奪還したが、それに先立ってISは46人ものシリア人クリスチャンを殺害していた。
しかし、ISが1週間以上にわたってサダドを攻撃している現在、シリア正教会総主教のモル・イグナティウス・アフレム2世はニューズウィーク誌に、500人以上のクリスチャン戦闘員が、ISを町に入れないために戦っていると語った。
シリアの戦闘員の士気を高めるために、ダマスカスからサダド入りしているアフレム2世は、この歴史ある町を守るために200人以上のクリスチャン戦闘員が長旅をして駆け付けたと説明した。
「急襲を受けています」とアフレム2世は強調した。「ISはサダドに向けて進軍しましたが、町に入れませんでした。他の武装グループの助けを借りたサダドの若者たちは戦い、ISをその出発地まで押し戻すことができました。シリアの他の地域からも幾つかのグループが支援に来ています」
多くのシリア人戦闘員がダマスカスやホムスの町々から集まっている一方、サダドから車で約8時間のトルコ国境に近いカーミシュリーから来た戦闘員もいる。
ある匿名のクリスチャン戦闘員はニューズウィーク誌に対し、「シリア全土から、人々がサダドのために戦うべく集まっています」と語った。「サダドは私たちにとって象徴的な場所です。2度と陥落させません」
アフレム2世は、キリスト教徒数百人が町を守るために集まっているが、多くのイスラム教徒とアラウィー派の人々はシリア軍の兵士としてISと戦っていると語った。また、レバノンに拠点を置き、イスラム教徒も参加しているシリア社会民族党からも数百人が町を守るための戦闘に参加していると述べた。
イラクとシリアにいた何万人ものキリスト教徒が安全を求めて故郷から脱出していることを受け、アフレム2世は、この地域でキリスト教が消滅の危機にあるこの時、シリア人クリスチャンが故郷を守るために戦うのを見て元気づけられると語った。
「若い人々がこの地を守ることを決め、故郷にとどまっているのを見ると、心動かされますし、勇気づけられます」とアフレム2世。「この地のために戦い、犠牲となる準備ができている彼らを見て、これはとても意義深いことだと思いますし、彼らのことをとても誇りに思います」
多くの人が町を守るために身をささげている一方、サダドの住民の多くはISがこの地域への進軍を始めたのに伴い脱出した。ニューズウィーク誌によると、この町の人口は夏に約1万5千人だったのが、現在では約2千人にまで激減したという。
人権団体「ア・ディマンド・フォー・アクション」の創立者ヌリ・キノ氏は、「私たちは、サダドがモスル、ニネヴェ、ハブール、カルヤタインのようにならないことを願います」とニューズウィーク誌に語った。「サダドの人々とその側につく人、シリア全土からの多くのクリスチャンは、ISがクリスチャンを奴隷にするのを見過ごさない姿勢を見せました」