イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)により誘拐され拘束されていたアッシリア人キリスト教徒のうち37人が7日、アッシリア東方カトリック聖使徒教会との交渉により解放された。
アッシリア人権ネットワークは、今回解放された37人は、2月にシリア北部のハブール川地域の村から誘拐された住民の一部だと報じた。ISの戦闘員は夜明けごろ村々を襲撃し、200人以上を人質とした。
7日に解放された37人に先立ち、8月に解放された老齢の男女22人を含む一定数がすでに解放されている。
アッシリア人権ネットワークは、今回解放された人質も老齢で、トール・タマーの街へ帰ったと述べた。アッシリア人権ネットワークは泣いている女性1人を含む数人の写真を投稿し、解放された人々の健康状態が皆良いことを確認したと述べた。
ISは今回を含め人質88人を解放したが、残る124人の自由を保障するための交渉はまだ続いている。
ISは先月、人質3人を処刑する動画を投稿し、多額の身代金が支払われなければ、拘束している人質を殺害すると脅迫した。
当初、ISは人質1人につき約10万ドル(約1200万円)、合計で約2300万ドル(約28億4千万円)の身代金を要求した。しかし、アッシリア人コミュニティーがそれを用意できないことが明らかになると、身代金は1200万ドル~1400万ドル(約15~17億円)に下げられた。
7日の37人解放の知らせを受けて、中東地域の少数派を支援する人権団体「ア・ディマンド・フォー・アクション(ADFA)」は、人質の解放を確証させたアッシリア教会の努力をたたえ、さらに多くの人質が解放されるだろうとの希望を述べた。
ADFAのスポークスマン、ダイアナ・ヤッコ氏は取材に対し、「また新たな動きがあったこと、また教会が甚大なプレッシャーの中からこの状況をうまく切り抜けたことによってアッシリア人のさらに大きな誇りとなったことで、私はとてもほっとしています。教会の指導者たちは政治家でもプロの交渉人でもありませんが、一人も見捨てなかったのです」と語った。
「この地域の人々が自分の国でこじきとなることを余儀なくされたISのモスル侵攻以来、私たちの叫びが多くの世界の指導者たちに無視されているのを受け止めなければならないことは、とても悲しいことです。自分の家でよそ者のように感じたことがありますか。それが、私たちが今感じていることです。子どもたちには未来があります。その未来はISとその残虐性の中にあるべきではありません」
声明の中でADFAは、解放された37人の中には数週間前に殺害された人質の母親がいると述べ、彼女はまだ息子の死を知らないだろうと述べた。「このことは多くの人々にとって悲しい現実です。彼らは引き離されているため、自分の家族がまだ生きているかどうかさえ知らないからです」
「私たちは、スウェーデンなどにいる誘拐された人々の親族と連絡を取っています。彼らは、愛する家族が解放されることを待ち望んでおり、知った顔を見つけるためにソーシャルメディアに投稿された写真を見ています」
「残りの人質が安全に解放されるために、できるところから介入するよう、私たちは政府に対する適切な働き掛けを続けます。家を追い出された人々の危機が深まっているため、緊急の人道的援助がまだイラクとシリアには必要です」