多くの親は、大量虐殺などの悪について、子どもと話し合うことを恐れている。しかし、米南部バプテスト連盟の倫理宗教自由委員会のラッセル・ムーア委員長は、親はそれを避けてはならないと語る。
ムーア氏は、自身のウェブサイトに投稿したポッドキャスト(英語)の中で、自分の息子の話をした。「縞模様のパジャマの少年」(原題:The Boy in the Striped Pajamas)という映画を見た息子が、ホロコーストは本当にあったことなのかと、ムーア氏に尋ねてきたという。この映画は、アイルランドの小説家ジョン・ボインによる第2次世界大戦を舞台にした同名の小説が原作となっている。
ムーア氏の息子はその夜、怖くて1人では眠れなくなり、両親の寝室で一緒に寝たいと言ってきた。映画の内容よりも、ホロコーストで実際に起きたことの話を聞いておびえてしまったのだという。
過激派組織「イスラム国」(IS)のようなテログループによる非道な悪事や、ニュースで報道されるグロテスクな残虐行為について話すのは、親にとっては楽しいことではない。それではクリスチャンの親として、この種の難題にどう対処すればよいのだろうか。
クリスチャンポストは、子を持つ親への助言を求め、ケイレブ・バー氏に話を聞いた。バー氏は、首都ワシントンからほど近い、バージニア州フォールズチャーチにあるフォールズチャーチ聖公会で、幼稚園と小学校の主任を務めている。ウィートン大学大学院(イリノイ州)を修了し、現在はさらに、トリニティー・スクール・フォー・ミニストリー(ペンシルベニア州)の修士課程で学んでいる。「親が悪について子どもと話すときは、何にもまして、悪に関して自分が理解していることを語るべきです」と、バー氏はクリスチャンポストとのインタビューの中で語った。
「親自身がしっかりした意見を持っていなければ、子どもに話すこともできません。ですから話す前に、中身のある思慮深い答えを用意しておいてください」とバー氏。「子どもにとって、親は翻訳者のようなものです。私たちはこの種のことを伝える上で、思慮深く、見識のある態度で接する必要があります。子どもたちに理解できそうもない難しい言葉は、使わないほうがいいでしょう」と言う。
これは、算数の初心者に微分積分の話をすべきではないのと同じだ。「悪について話すときに強調すべきことは、イエスが必ず勝つということです。悪と破壊について考えるときは、天地創造と堕落、贖(あがな)いと新しい天地の創造という4つのテーマの中に、悪の話を組み入れて語るべきだと思います」とバー氏は続けた。
「希望や信頼と対にして、悪が永遠には続かないことを語っていただきたいと思います。この世には善なるもの、美しいもの、真実なものの勝利があるのだということを伝えてください」とバー氏は付け加えた。
ポッドキャストの中でムーア氏は、ぞっとするような不正や人生の痛みに対して、親は安易に答えを出そうとすべきではないと述べている。また、「分からない」と率直に答えることも恐れる必要はないという。
「子どもに安易な答えを聞かせても、根本的な問題解決にはなりません」とムーア氏。そうしてしまうと、子どもたちは親がその話を避けたがっていると考えるか、最悪の場合、親はその問題を気に掛けてもいないのだと考えることになる。
また、神の主権とは、邪悪な行為を黙認することだと解釈させてもいけない。
「子どもたちに、神は悪だと思わせてはいけません。神が主権者であることは理解しているものの、罪に関して聖書的な理解がない子どもや、罪が神に対する反逆であることを理解していない子どもは、神は主権者ではあるが、悪であるという神観を持つ危険性があります」「実際、多くの人は神をそのように見ています」とムーア氏は述べた。
しかし、聖書は神を主権者として啓示しており、悪は悪として啓示している、とムーア氏は言う。またクリスチャンは、未来が神の手の中にあることを忘れてはならない。
ムーア氏は、「私は、神がイエス・キリストの統治の下で、歴史全体を動かしていると確信しています。神は私たちの苦しみから遠く離れておられず、独り子を遣わして十字架に架け、私たちの残虐行為のただ中で苦しませたのです」と締めくくった。