【CJC】教皇フランシスコは、ドナルド・トランプ氏が共和党の次期米大統領候補に決まったとき、貧しい人や排除された人のことを忘れないように、とクギを刺していた。
選出直前にも、教皇は「人間、政治家について判断はしない。その行動が貧者や疎外されている人たちにもたらす苦難がどんなものか知りたいのだ」とイタリア紙レプッブリカのユージニオ・スカルファリ記者に語っている。
11日付の同紙によると、インタビューが行われたのは7日。教皇が心配していることは、祖国を脱出しなければならない移住者や難民を、富裕国の中の貧困者が受け入れるかという点だった。
難民に仕事を奪われると恐れる人たちが受け入れ策に反対しているとして、「豊かな国にも、貧しい国からの人たちを歓迎することを恐れる貧しい人たちがいる。私たちを分断する壁を壊さなければならない」と教皇は語った。
トランプ氏の大統領就任決定の直後、バチカン(ローマ教皇庁)国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は9日、トランプ氏に祝意を表した。
ロシア正教会の最高指導者キリル・モスクワ総主教もトランプ氏に「心からの祝意」を表している。
地元の米国では、福音同盟(NAE)のリース・アンダーソン会長ら指導者たちが、全国民に、大統領選の過程と結果を尊重するよう呼び掛ける声明文を発表している。
態度未決定とされていた人々の中にもいた「隠れトランプ」派まで含めると、キリスト教保守派とされる福音派の有権者の8割がトランプ氏に投票したとみられ、棄権は少なかったようだ。
カトリック信者の人気が高い教皇は、環境、移民、貧困などの問題で「民主党寄り」のメッセージを出す「リベラル派」として知られているが、信徒の動向は複雑。
プリンストン大学などの米国を代表する著名宗教学者らが連名で「カトリックの価値観を代表していない『俗物』のトランプ氏は大統領にふさわしくない」との意見書を出したほどだが、同氏を支えたのは移民に仕事を奪われている中間層以下の白人カトリック層。
民主党支持者の方がやや多い傾向のカトリックだが、トランプ氏は浮動層を切り崩し、支持者を民主党から奪ったとみられる。
トランプ氏はこれまで選挙を一切経験したことはなく、「ワシントン政治」を、米国をダメにしたものと強く非難し、政治家をやり玉に挙げてきた。
そうは言っても、大統領に当選すると政権発足の準備には、オバマ現政権や議会、諸官庁の協力がなければ何1つ動かない。
まず首席補佐官を頂点とするホワイトハウスのスタッフ、国務、国防両長官らの閣僚、4千人にも上る「ポリティカル・アポインティー」(政治的任命)の選任など、来年1月の大統領就任式までに決めなければならない。そのうち約千人は上院の承認が必要だ。
とりあえずは祝意を示したものの、宗教界は今のところ次の打つ手が見つからず、暗中模索を続けるしかないとみられる。