バラク・オバマ米大統領の元信仰顧問は9日夜、ドナルド・トランプ氏がキリスト教徒から高い支持を受けて大統領選で勝利したのは、ヒラリー・クリントン氏の陣営が信仰の共同体、特に福音派やカトリックの白人信者を「ほぼ完全に無視」したためだと非難した。
退任を控えたオバマ氏の元信仰顧問主任、マイケル・ウェアー氏は、英国クリスチャントゥデイに、「私は昨夜、わが国のために、また恐れを感じながら床に就いた国民のために悲しみました」と語った。
オバマ氏が当選した2008年と12年の大統領選で陣営の信仰顧問を務めたウェアー氏は、次のように語った。「トランプ氏がキリスト教徒から高い支持を得た要因はいろいろあります。しかし確かにいえることは、クリントン陣営が信仰の共同体、特に白人のカトリック信徒と福音派信者らに共感を示さず、熱心に取り組まなかったことがその一因だということです」
「これは、民主党の今後の課題の1つとしなければなりません」と、ウェアー氏は付け加えた。
ウェアー氏のコメントは、民主党内部の緊張を反映しており、特にオバマ氏とクリントン氏の間で今後数日中に表面化することは間違いないだろう。08年の民主党の指名候補争いで、両者が対立した経緯があるからだ。
ウェアー氏は、間もなく登場する共和党の大統領のために祈るつもりだと述べ、米国の傷を癒やすために教会が果たす役割は大きいと話す。「私はドナルド・トランプ氏のために祈ります。また国と教会のためにも祈ります。教会は今後、機会があれば政治的指導者の手を引いて彼らを支援し、逆に必要な場合は反対することになるでしょう」
「私たちは政治的相違や人種的な違いを超えて、癒やしの働きをしていかなればなりません。その相違の故に、キリストにある私たちの団結が圧倒され続けているからです。また、社会における信仰の意義についても、基本的なところで合意しなければなりません。私は教会の将来について、楽観的な見方をしています」
9月30日の英国クリスチャントゥデイとのインタビューで、ウェアー氏は次のように述べていた。
「ドナルド・トランプ氏は、近代の大統領候補者の中で最も世俗的で、最も準備不足で、最も資格がなく、最も危険な候補者です。彼は自分の行く手を阻む者を虐待し、自分の味方をする人に恥をかかせています。彼は自らの個人的利益のために、米国の最も脆弱(ぜいじゃく)な部分をあおり立て、分裂させました。トランプ陣営の人種差別や外国人嫌悪、女嫌いが、意図的なものか無知によるものかは問題ではありません。それはトランプ氏が、わが国のために決断を下しているかどうかが重要でないのと同じです。トランプ氏には、大統領後継者としての品位や思慮深さのかけらもありません。職務に関する理解もなく、女性の社会奉仕を望む気持ちを削いでおり、共和党のこれまでの候補者が持っていた保守的な特徴や保守主義に対する忠実さもありません。トランプ氏には中身がないのです。しかし今日の米国が痛切に必要としているのは、中身のある指導者です」
最終的には福音派のキリスト教徒の多くがトランプ氏に投票し、トランプ氏が力を得る主要な役割を果す結果となった。米ABCニュースによると、福音派のキリスト教徒の81パーセントがトランプ氏を支持した。これは、元大統領のジョージ・ブッシュ氏やジョン・マケイン氏、ミット・ロムニー氏が獲得した福音派票よりも多い。
一方、米ABCテレビと米ワシントン・ポスト紙の共同世論調査によると、白人のカトリック信徒の54パーセントがトランプ氏に投票し、クリント氏に投票したのは38パーセントだった。
ウェアー氏はカトリックの家庭に生まれ、後に福音派に転向している。来年初めには、『Reclaiming Hope: Lessons Learned in the Obama White House About The Future of Faith in America(希望の再生:オバマ政権で学んだアメリカにおける信仰の将来への教訓)』という新刊を出版する。