オーストラリア・ビクトリア州のバララット教区の元司教、故ロナルド・ムルカーンス氏が残した遺産が児童虐待の被害者に与えられる。
1971年から97年までバララット教区の司教だったムルカーンス氏は、今年4月に死去し、自宅など計200万ドル(約2億円)以上になる遺産を教会に残した。
ムルカーンス氏は、バララット教区で起こった虐待への対処が遅かったとして告訴され、加害司祭らの行為を上部組織に報告せず、組織内で役職を異動させていたと報告されている。亡くなる直前には、オーストラリアの「児童性的虐待への機関の対応を調査する王立委員会」に出向いて謝罪していた。
バララット教区の現司教、ポール・バード氏は、ムルカーンス氏の遺産を虐待被害者の賠償金に充てたいとして、「バララット教区がムルカーンス氏の遺産から頂くものが何であれ、虐待の犠牲者に対する賠償のために取っておこうと思っています。教区がこれまでに何年間も虐待被害者に向けてきた支援をこれからも続けます」と述べている。
バララット教区での虐待問題の深刻さに、オーストラリアのキリスト教界は大きなショックを受けている。一方、ビクトリア州警察当局は8月、オーストラリアのカトリック教会最高位の立場にあるジョージ・ペル枢機卿を告訴する可能性を除外できないと語っている。