オーストラリアのあるキリスト教系の学校の校長が、5月初旬に2人のイスラム教徒の教師を受け入れなかったことを受けて、反発を受けている。
チャーチ・オブ・クライストの流れをくみ、オーストラリアのクイーンズランド州に位置するレドランズ・カレッジのマーク・ベンスレー校長は、頭にスカーフを巻いたイスラム教徒の女性教師2人を拒否した決断について説明した。
「この学校で教える者には、学校が掲げるキリスト教的原理、習慣、信条を積極的に支持してもらうよう心を配ることが私の義務です」と、ベンスレー氏は5月20日に保護者へのニュースレターに書いた。
「ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭に巻くスカーフ)を頭に巻くということは、キリスト教的原理、習慣、信条に反する、または一致しない態度で積極的に行動することだとみなしたのです」と、ベンスレー氏はさらに書いた。「彼女達がヒジャブを身につけたいという気持ちは尊重しますが、レドランズ・カレッジでそうするのは不適切だと思います」とも述べている。
しかし、ベンスレー氏のこの決断は、レドランズ・カレッジ内の関係者全員に支持されたわけではなかった。
保護者のジェニー・デュークさんは、ソーシャルメディア上での投稿で「自分の娘がこんな学校に通い、自分が出た大学がこんな学校に先生を送っていると思うと哀しい」と書いた。
グリフィス大学イスラム研究学科長のモハマド・アブダラ助教授は、「これは教師を教育の場を初めて経験する上で不幸な状況です」と、地元の日刊紙「クーリエ・メイル」に語った。
「このような行動は、多くの教会やキリスト教系グループが異なるコミュニティー同士の理解を図るために行ってきた素晴らしい活動に逆らうものです。キリスト教系の学校がこのようなことをするなんて誰も思いませんでした」と、アブダラ助教授は語った。
学校としては声明で、「キリスト教的価値観を隠すつもりはない」こと、そしてそれでも「様々な背景、宗教を持つ人々全てに対し尊敬を愛情を持っている」と述べている。
クーリエ・メイルが当初この件をニュースにした際コメントを投稿した1人は、学校から移動を要請された女性の1人が自分であると語り、不満の理由の一つは、彼女自身がイスラム教徒であることを表明することが問題になるかどうか前もって学校に問い合わせていたからだという。
「私が言われたのは、学校の価値観を理解し、尊重している限り、信仰の表明は問題にはならないということでした」と、この女性はコメントした。
「私はトライアル授業をする日の朝、直接ベンスレー氏に会いましたが、私の頭のスカーフについて何も懸念を示しませんでした」と彼女は書いた。次の日になって、ベンスレー氏が彼女ともう一人の女性の移動を決定したことが分かったという。
「私自身は、従業員、教師、訪問者を受け入れたり、拒否したりする上で、ベンスレー氏が自分の学校の価値観とキリスト教の信仰を大事に考えたいという気持ちは理解できます。ですが、私が疑問に思うのは、なぜもっと早く言ってくれなかったのかということです」と彼女は書いた。
この件に関して寄せられたコメントの中には、「イスラム教徒として、レドランズ・カレッジが自分たちの価値観を守るためにとった行動は尊敬する」という、ベンスレー氏を擁護するコメントもあった。
「私の考えでは、あれは差別というよりも、私立学校でキリスト教の価値を守るという意志に基づいた行動だ。問題になった2人の教師はこの決定を受け入れて、また前に進んでいけばよい。イスラム教徒として、我々も他の宗教を尊重し、互いに親切にしなければならない。人生は短いので、そんなことにかまっている暇はない。むしろ、世界中にいる、我々よりも不運な人たちがよりより生活を送れるよう努力することの方が大事だ」