苦悩する南スーダンの住民にキリストをもたらす教会
一方、英クリスチャントゥデイは3日、「教会は苦悩している南スーダンの住民にキリストをもたらしていると、米国の立法府の議員が語る」という見出しの記事を掲載した。
「ご自身の宣教奉仕全体を通じて、イエス・キリストは辺境に追いやられた人たち―とりわけ貧しい人たち、飢えた人たち、苦悩する人たち―に手を差し伸べた。南スーダンでは、教会がこの内戦や人道的危機・大規模な飢餓の脅威で苦しんでいる住民を助けることで自らの役割を果たすことによって、イエスの模範に倣っている」と、同紙は報じた。
それによると、米国下院世界人権小委員会で委員長を務めているニュージャージー州のクリス・スミス議員が、その報道の少し前に南スーダンの首都ジュバのパウリノ・ルクドゥ・ロロ大司教(カトリック)と会談した。この会談は、同国における人権状況についての事実調査事業の一環であった。カトリック・ニュース・エージェンシーによれば、スミス議員は、ルクドゥ大司教がどのように「多くの人々の失望について述べた」のかを詳しく語った。
「彼らが独立した5年前からの大きな期待は、目下、砕けて燃えてしまった。希望は永遠のままではあるが」と、クリス議員は述べ、また、ルクドゥ大司教は「人道危機や指導権の危機について深い憂慮を表明した」という。
この人道危機のただ中で、教会の職員たちはそこにいる多くの難民たちのために「競って収容所や安全な避難所を提供している」と、スミス議員はルクドゥ大司教との会談を思い出しながら述べた。
さらに、「人道援助の提供において、教会は、いつどこでも同じように、鍵となる役割を担っている」とスミス議員は述べ、「私が会った司教たちはひたすら徹底した決意をもってマタイによる福音書25章を生き抜き、脆弱(ぜいじゃく)な人たちがまるでキリストであるかのように彼らを助けています」と付け加えた。
南スーダンは2011年に独立国となったが、2013年12月以来、このアフリカの国は政府の軍隊とスーダン人民解放軍の間の内戦で引き裂かれてきた。この2つの勢力は初め、和平協定を結んだものの、暴力が新たに勃発したために、和平協定は結果的に崩壊してしまった。
ルクドゥ大司教とは別に、スミス議員は、同国にいる一部の援助活動家たちに対する攻撃について注意を引こうと、キール大統領とクオル・マニャング・ジューク防衛大臣とも会談した。
過去に向き合い、それに続く和解と赦しを
一方、2014年7月まで3年間、南スーダン担当国連事務総長特別代表や国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)代表を務めたヒルデ・F・ジョンソン氏は、南スーダンに関する最近の著書『South Sudan: The Untold Story from Independence to the Civil War』(南スーダン:独立から内戦までの語られていない話)で、内戦の原因を詳細に分析している。
その上で、「過去に向き合うこと、それに続く和解と癒やしによってのみ」問題が解決されるとするとともに、「あらゆる暗闇にもかかわらず、希望は光を見ることができる」というデズモンド・ツツ名誉大主教(南部アフリカ聖公会ケープタウン名誉大主教)の言葉を引用し、南スーダンを戦闘や破綻から救い、国民が夢見た国をついに建設できると述べ、その時にのみ南スーダンは国(nation)として立ち上がることができると結論付けている。
また、この本のはしがきを書いたノーベル平和賞受賞者のツツ名誉大主教も、南アフリカ共和国のアパルトヘイト後の経験や自らの南スーダンへの訪問を踏まえて、南スーダンが「あからさまに、かつ正直に、過去に関する真実に向き合うことなしに、和解と癒やし、そして説明責任なしに、新しい未来を築くことはできないだろう」と述べ、「自由の果実を味わう」変革を信じることが、「あらゆる暗闇のただ中において、今や私たちの希望なのだ」と述べ、「神があなたがたを祝福してくださるように」と結んでいる。
日本の自衛隊、11月に南スーダンへ派遣へ 疑問の声も
日本政府は、11月から安保法制の下で、南スーダンの首都ジュバに自衛隊を派遣し、武器使用を伴う「駆けつけ警護」と「宿営地共同防護」という新たな任務を与えようとしていると報じられている。
しかし、「ゴジェニ教会とクク人:都市ジュバから見る南スーダンのキリスト教」「祈りと呪いの間? 南スーダン―ウガンダ国境地帯におけるキリスト教徒の行為と言説」「見出される差異と結びつき:暫定期間と南スーダン独立後のハルツームに生きるキリスト教徒」などの論文を執筆した飛内(とびない)悠子氏(日本学術振興会特別研究PD、南北スーダン地域研究・難民・強制移動研究・人類学)は、この「駆けつけ警護」や安保法制の意味に疑問を抱いているという。
飛内氏は、最近の共著書『中東と日本の針路 「安保法制」がもたらすもの』(長沢栄治・栗田禎子編、大月書店、2016年5月20日)の第15章「南スーダンの平和と日本―紛争の『現場』から」で、1. 独立後の南スーダンと新たな紛争、2. 南スーダンの新たな状況と日本の政策、について記し、「南スーダンに深く関わってきた者として、日本には『駆けつけ警護』を行うよりほかに南スーダンに対して考えるべきこと、やるべきことがあるはずだと思う」と述べ、南スーダンに生きる人との対話を通して状況を把握することの必要性を説いている。
安保法制案「可決」から1年を迎えた19日(月・敬老の日)、「戦争させない!9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の主催により、午後3時半から午後5時20分まで、国会正門前で「強行採決から1年!戦争法廃止!9・19国会正門前行動」が行われ、キリスト者平和ネットなどを含む2万3千人(主催者発表)が参加した。
この集会で、元自衛官の井筒高雄氏が、「いよいよ自衛隊に死亡者・負傷者がたぶん出ると思います」と語り、自衛隊の南スーダン派遣の問題点を厳しく批判した。
「政治判断による安倍さんの独りよがりのための海外派兵で自衛隊の命がぞんざいに扱われるというのが現実だと思っている」と井筒氏は述べ、戦場と化しているジュバの現実を指摘した。
「安保法制で言っていた、邦人を保護する、あるいは他の部隊を『駆けつけ警護』と言っても、もうJICAの職員は7月中旬にチャーター機で脱出している。あるいは日本大使館(員)のほとんどは航空自衛隊のC130という輸送機でもう日本に戻っている。残った日本大使館(員)は、夜は危ないからと自衛隊の宿営地に寝泊まりしている。つまり、安保法制でいう邦人保護なんていうのはもう現実問題としてあり得ない。あるのは何か?海外派兵をする目的は何かといえば、実戦をするということだけ。しかも、『共同警備』、あるいは『駆けつけ警護』と言いながら、他国のPKOの軍隊と一緒に戦闘行動をするということだけなんですね。むちゃくちゃ大問題ですよ、これは」と井筒氏は批判した。
井筒氏は、「自衛隊員は安保法制によって、隊長の命令で、政治の命令で、南スーダンで、敵と思われる市民かテロリストか分からない人を殺すかもしれない。その時、殺したら自衛隊員は帰ってきて、殺人罪で刑罰を受ける。そんな法律を許してそのまま自衛隊を南スーダンに派兵していいわけがない!」と怒りを込めて非難。武力を使わない外交努力や、税金を使って人道的にどうやったら武力行使をしなくても平和外交ができるかということに知恵を絞るべきだと思っていると語った。
総がかり行動実行委員会は、自衛隊の南スーダンへの「派兵」に反対し、南スーダンに送られる予定の部隊がいる青森で、10月30日(日)に現地集会を開催する。(続きはこちら>>)